研究課題
本研究は、RFeO3(R:希土類元素)を試料に用いた無容器浮遊溶融凝固実験において見出した六方晶の準安定相(h-RFeO3)の生成に関する筆者らのモデル(Entropy-Undercooling Regime Criterion)を検証するための実験装置の試作および同装置による検証実験の実施を目的としている。筆者らが提唱しているモデルとは、"過冷したメルトからの凝固においては平衡相よりも高エントロピーの相、すなわち融解エントロピーの小さな相が優先する。"というものであり、このモデルの検証には準安定相の溶融・凝固時のエントロピー変化が不可欠なところから、23年度はこのエントロピー変化を測定すべく無容器状態で示差熱分析が可能な装置の試作を行った。試作した装置は、ガスの流体力学的なトラップ効果を利用したノズルを二組有する浮遊炉 (Aerodynamic levitator: ADL) であり、一方のノズルには物性値が分かった参照用試料を、他方のノズルには実験試料を入れ、同一条件で浮遊・溶融させ、冷却・凝固させるという仕組みである。当初、試料の加熱には、現有の半導体レーザーの出力を二分割し、参照用試料と実験試料を同一条件で加熱・冷却することを計画していたが、同一焦点距離で、しかも強度が等しくなるように分割することが困難なことから、ファイバー式の半導体レーザーをあらたに追加し、二台のレーザーで照射するようにした。その結果、それぞれのノズル単独での浮遊・溶融・凝固は可能となったことから、あらたに二台のパイロメーターによる測温機能を組み込み、加熱・冷却速度が同じになるような条件の洗い出しを行っている。
2: おおむね順調に進展している
概要にも述べたように、当初はレーザー光をハーフミラーで分割し、参照用試料と実験試料を同時に加熱・冷却することを計画したが、レーザー光の等分割が困難なことに加えて、加熱・冷却速度は試料サイズおよび形状にも依存することから、実施に当たっては、レーザーを追加、二台のレーザーにより、加熱・冷却速度が等しくなるようにそれぞれを制御するようにした。したがって研究目的の達成度に関しては概ね、計画通りと考えている。
23年度に製作した示唆熱分析用ADLに、二台のパイロメーターを組み込み、これによる測温技術とデーターアクセス法の確立を図り、実験に供して標記のモデルの検証・定量化を行う。また併せて浮揚ガス中の酸素分圧を変化させることにより、筆者らが既に報告している準安定相生成の酸素分圧依存性といった応用問題への展開を行う。
研究費は主な使途は実験試料等の消耗品であるが、併せて今年10月に開催が計画されている微小重力利用に関する日中韓シンポジウムへの、筆者ならびに大学院生の参加費および旅費に充当する予定である。
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Materials Research in Microgravity, ed by R. W. Hyers and D. Matson, NASA
巻: accepted ページ: in press
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