研究概要 |
本研究では、0.1nmの深さ分解能をもって固液界面における電気化学反応の1原子・分子層レベルのその場解析を可能とする新規な計測手法を確立し、従来未知であった単分子レベルの固液界面反応の解明に挑戦することを目的としている。 同心円形状の反射型プラズモンアンテナセンサおよび金属ナノ粒子を表面コートした透過型プラズモンセンサを試作し、0.1nm深さ分解能で固液界面を計測する系を開発した。センサはAu,Ag,Cuなどのプラズモン活性金属を用い、高感度で固液界面における吸着分子の表面増強ラマンスペクトルを測定することに成功した。また急峻なプラズモン電界勾配を利用して、固液界面から深さ方向のスペクトル変化を0.1nmの分解能で測定することにも成功した。実証例として、一般にプラズモン励起が弱いとされるNiプラズモンアンテナ上での次亜リン酸吸着状態の測定に成功した。この結果は、種々の金属のセンサとしての適用可能性を示しており、広範な展開が期待できる。また上記の結果は、密度汎関数法により確認することができた。 さらにAuのプラズモンセンサを用いて成長抑制剤のヤヌスグリーンB(JGB)の吸着構造を解析し、JGB分子の電界印加による分解反応の観察に成功した。またビア構造中のJGB溶液中のJGB分子の拡散状態をラマンイメージングで観察することに成功した。ハードディスク表面のサブナノメートル厚のダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜と液体潤滑剤の、膜厚方向の結晶および分子構造の変化の測定を行い、窒素添加DLC表面近傍の潤滑油分子の界面吸着構造を0.1nmの深さ測定することに成功した。特に、潤滑膜が0.7nmずつの固着層と流動層から形成されていることを実証した。このように、従来測定が困難であったオングストロームレベルの分解能での固液界面や固固界面の分子構造が簡便に測定できることを明らかにした。
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