研究概要 |
プロトン伝導セラミック型燃料電池 (PCFC)用のアノード電極として、ニッケル無電解めっきによる検討を行った。結果、めっき法は確立できたが、その性能は、Pd電極よりも大きく劣ることが判明した。また、アクリルビーズを用いた表面の多孔化による電極性能の向上の研究も実施し、多孔化に成功した。一方、最終年度は、カソード材料の研究を重点的におこなった。PCFCのカソード材としてプロトンとホールの混合伝導体の発見は極めて重要であるが、良好な材料は未発見である。最近、Grimaud らにより Ba0.5Sr0.5Co0.8Fe0.2O3-d (BSCF5582)への0.6 wt% 程度の H2O の溶解が報告[J. Electrochem. Soc., 159, B683 (2012).]されたため、この材料の可能性を調査した。Grimaud らは熱重量測定 (TG) により間接的にH2Oの溶解量を測定していたため、本研究において直接的にKarl-Fischer 滴定法を用いた測定を行った。結果、BSCF55x(1-x)中の H2O 溶解量は、Coの組成および水和雰囲気に関わらず 0.005 wt% 程度であり、Grimaud らの報告値0.6 wt% とは大きく異なっていた。一方、我々のTG 測定により、水和を行った試料の温度を乾燥O2雰囲気下で室温から1000 °C まで昇温しその後室温まで降温した際の重量変化を測定した結果、測定前後で0.4 wt% 程度の重量減少が観測された。したがって、TG 測定では昇降温の際の試料からの酸素の出入りのために、試料へのH2O の溶解量を正確に測定できていないと考えられた。結論として、BSCF5582 へのH2Oの溶解量は非常に少なく、PCFC の理想的なカソード材として求められるプロトン伝導性を示す可能性は極めて低いと考えられる。
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