本研究では、従来の結晶育成とはまったく違ったプロセス概念である、結晶の磁気異方性を利用して単一グレイン微粒子からバルク単結晶を作製するプロセスの開発に注目している。具体的には、単結晶育成が困難な斜方晶 FeSi2 化合物を対象にし、(1)配向度を向上させるための異方静磁場の最適化、流体による配向粒子保持手法の開発、(2)3 軸が配向した仮成形体(微粒が堆積したグリーン)の作製、(3)配向度を低下させないまま焼結を行う手法の開発、(4)得られたバルク結晶の配向度などの評価を行った。以下にこれらの成果を記す。(1)3 軸配向度と首振り磁場の関係を理論的に解析し、磁化率の異方性に従って異方磁場を変化させる指針を得た。この指針をもとに配向実験を行い、配向度と首振り磁場の関係を明らかにした。(2)粒子を保持する流体の粘度などに堆積物の配向度が依存することも明らかにできた。(3)上記のグリーンを用いて、焼結用るつぼの形状などを工夫することにより、3 軸が配向したバルク体の作製が可能になった。(4)バルク体の配向度を X 線により評価し、5 度程度のバラツキがある 3 軸配向の結晶(「単結晶」)であることを確認できた。3 軸配向バルク体の作製プロセスの基盤を確立できた。
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