研究課題/領域番号 |
23656483
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
大田 昌樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50455804)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ハイドレート / 分離プロセス / ミクロ構造 / 形成速度 |
研究概要 |
本研究は,ハイドレートの分子認識機能を利用した膜分離技術を開発する際に重要となる,ケージ形状に強く依存するガス分子の吸着・拡散機構を解明し,ハイドレート構成分子やハイドレート担持材料の選定および分離プロセスにおける操作条件の最適化法の検討を目的とする.具体的には,メタンガスからの水素精製プロセスに着目し,まずハイドレート粒子への水素ガスの吸着・拡散挙動とハイドレートのケージサイズとの関連性について検討した.熱力学安定性の観点から重水素化合物を含めた,種々のホスト分子(H2O, D2O)・ゲスト分子(tetrahydrofuran(THF), THF-d8, furan, cyclopentane,tetrahydrothiophene)を対象に水素混合ハイドレートの形成速度を測定した.また,形成速度の挙動から新規速度論モデルを構築し,定量的解析を行った.加えて,XRDの回折データよりハイドレートのケージサイズを算出し,吸着量や拡散速度の関連付けを試みた. 平成23年度の検討にて,まず装置開発により測定データの再現性の向上や初期過程における形成速度測定が可能となった.ホスト分子である水の重水素化は熱力学安定性への影響は大きいものの,形成速度への影響は小さく,ホスト分子よりゲスト分子の影響が大きいことを確認した.特に水素-furan混合ハイドレートは他のハイドレートに比べ,形成速度が大幅に向上した.一方で,吸着量に大きな変化は見られなかった.続いて,新規に構築した速度論モデルを用いて解析を行った結果,THFを用いた親水性溶媒系のハイドレートとそれ以外の疎水性溶媒系のハイドレートと傾向が異なったものの,ケージサイズの縮小に伴い拡散速度は増加傾向にあった.これより,ケージサイズの微小変化においてもガス分子の拡散速度を制御することが可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Furanハイドレートが水素混合ハイドレートの形成速度を大幅に向上させることや,拡散速度の傾向とハイドレートケージサイズとの関係を示すことができたことから,おおむね順調に進展していると判断した.一方で,furanの揮発性が高いため分離後の水素純度を低下させてしまうことや,メタンやCO2ガス,これらの混合ガスに関しては未検討であるといった課題が生じている.加えて,低圧で不安定となるハイドレートの表面構造解析手法の確立も達成していないため,これらを考慮して次年度の研究計画を立てる必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
拡散速度を大幅に向上させたfuranは揮発性が高いため,分離後のガスの純度を低下させてしまうといった課題が生じた.今後は不揮発性であるtetra-n-butylammonium bromide(TBAB)等のイオン液体を用いたセミクラスレートハイドレートについて研究を行う.その際,セミクラスレートハイドレートの構造自体が明確になっていないことやTBAB濃度に応じて構造が変化するといったことから,構造解析の検討や本系に対応した速度論モデルの改良を行う.また,ケージサイズだけでなく,結晶子サイズやハイドレート粒子の形成法においてもガス分子の拡散速度に影響を与える可能性があるため,多種にわたる観点からハイドレート中の拡散速度の支配因子を検討していく. イオン液体を用いることで低圧でのハイドレートの安定性が増すため,工学的な利用価値を高めることを目的に,より低圧での分離プロセスについて検討を行う.また,実際にハイドレート膜を用いて分離係数を測定するため,装置開発および分析方法についても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成24年度請求額と合わせ,次年度に計画しているハイドレートを用いたガス分離プロセスに関する研究の遂行に使用する予定である.
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