研究概要 |
昨年度課題であった添加物の揮発性を改善すべく,不揮発性であるtetra-n-butyl ammonium bromide (TBAB)やtetra-n-butyl ammonium chloride (TBAC), tetra-n-butyl ammonium fluoride (TBAF)を用いたセミクラスレートハイドレート粒子を形成させ,それぞれに対するガスの平衡吸着量および吸着速度を測定した.その際,メタンガスからの水素精製プロセスに着目し,H2およびCO2ガスに関して検討を行なった.また,相平衡推算モデルの構築を行い,得られたパラメータからH2/CO2選択率の温度依存性について評価を行なった. 平成24年度の検討にて,セミクラスレートハイドレートは添加物である第4級アンモニウム塩の濃度や形成温度により形成される構造を制御可能であることをラマン分光分析により確認した.特にTBABセミクラスレートハイドレートに関しては,TBAB濃度を2.6 mol%, 形成温度を274 Kとした際,濃度3.7 mol%, 温度282 K時に形成したTBABハイドレートに比べて水素吸着量は3倍程度増加した.二酸化炭素は水素に比べ平衡吸着量は6倍程度多く,平衡吸着量の半分に達する時間は100倍程度遅い結果が得られ,大きく吸着挙動が異なることから分離技術への適用可能であることが示唆された.添加した第4級アンモニウム塩のアニオンの影響は,ハイドレートの安定性に大きく寄与するものの,ガスの吸着速度に顕著な影響は見られなかった.相平衡推算モデルから得られたパラメーターにより算出したH2/CO2選択率は高温ほど高く,2.6 mol%TBABハイドレートにおいては100を超える条件も存在した.この値は現状の高性能高分子膜よりも高く,膜分離システムへの応用の可能性が示唆された.
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