研究課題/領域番号 |
23656484
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
長谷川 政裕 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50007209)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | リサイクル / コンクリート / 骨材分離 / 粉砕操作 / 劣化反応 / 分離度 |
研究概要 |
本年度は酸性物質(硫酸・塩酸・硝酸)水溶液による廃コンクリートの劣化現象および粉砕助剤としての効果に着目し研究を行った。まず、骨材に対する酸性物質の影響を検討したが、骨材成分の溶出が最も小さいのは塩酸であることがわかった。次いで、既知の骨材を所定量用いて作製したコンクリートを粗粉砕した試料を7日間、濃度の異なる3種類の酸性水溶液に浸漬し、pHおよびカルシウムイオン濃度変化を測定した。その結果、pH濃度や酸の種類によって到達時間は多少異なるもののほぼ12と一定値を示し、またカルシウムイオン濃度変化は塩酸・硝酸・硫酸の順に大きく、硫酸では24時間程度で硫酸カルシウムの溶解度とほぼ一致した。すなわち、カルシウムイオンの溶出量は塩酸が最も大きく、骨材への浸食も小さいことから最も有効な酸性物質であることを見出した。酸添加による湿式粉砕をボールミルで行った結果、粉砕助剤としての効果はあまりなく、粉砕後の再生骨材分離度をみるといずれの場合も0.2~0.3程度であった。この値は予備実験として行った水添加および乾式粉砕の場合とあまり変わらない結果となった。これは、短時間の湿式粉砕では粉砕が十分に進行しなかったためと考えられるが、長時間の密閉粉砕では発生ガスの処理を考慮しなくてはならない。そこで、より粉砕性の向上を目指して、粉砕様式を剪断機構および摩擦機構によって粉砕を行う撹拌ミルに変えて粉砕実験を行った。このときの試料は酸性物質水溶液中へ一定時間浸漬後乾燥させたコンクリート片である。その結果、酸性物質水溶液の浸漬処理をしない場合と比較して、塩酸と硝酸水溶液処理では5%、また硫酸水溶液の処理では2%程度骨材分離度が向上することが明らかとなった。 また、骨材分離度に関しては、粉砕後の試料の2次元画像処理による形状測定を行い、試料の円形度の差から再生骨材の判別が可能な方法を検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酸性水溶液による劣化処理はおよそ12時間程度で変化がなくなり、反応は平衡状態になり、新たな反応物質がなければ更なる劣化反応は進行しないと考えられる。酸性水溶液による廃コンクリート片の湿式ボールミル粉砕では、予想以上のガスが発生し、長時間の粉砕操作が十分に行えなかった。そこで、発生ガスの排出させるための方法を模索し検討してきたが、これまで満足行くようなボールミルの改良は達成できなかった。したがって、湿式ボールミル粉砕のデータは粉砕時間1時間程度のデータであり、本来の目的である骨材分離にボールミル粉砕の効果を十分に検討することができなかった。 粉砕操作では粉砕機が変わるとその粉砕機構が変化し、粉砕条件によって粉砕結果が大きく異なる。本研究では粉砕機を撹拌ミルに変えたことで、その粉砕機の最適粉砕条件を決定するために種々の予備実験が必要になった。撹拌ミルを用いての予備実験の結果から、粉砕媒体を用いないで粉砕する、所謂、自生粉砕が比較的良好な骨材分離度を示すこと、一回あたりの処理量も増加させることができることなどが明らかになった。酸性物質の浸漬処理をしない場合は、水を添加した湿式粉砕よりも乾式粉砕の方が骨材分離度が高いことなど、骨材リサイクルに撹拌ミル粉砕が比較的有用であるなどの多くの知見を得た。また、乾式自生粉砕方式ボールミルで行った結果、ある程度粉砕した後微粉を除去して更に試料を加え粉砕するという多段階方式が効果的なことなど、当初予想していない方法の有効性が明らかになってきた。 また、粉砕処理後の試料の骨材分離は、ふるいわけおよび目視で分離しているが、思いのほか手間がかかり、短時間での分離が難しい状況にあるが、分離後のリサイクル骨材とセメントペーストが付着した骨材では、その形状に大きな差があり、その形状の違いによる分離法についても現在検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度の結果より、これまで劣化処理と粉砕操作を並行して行うことを主体的に考えてきたが、廃コンクリート片の劣化処理プロセスとその後の粉砕による分離プロセスを分けて行うことを提案する。また、酸性物質による劣化反応については、塩酸浸漬処理時間をさらに延長してその効果を検討すると共に、硫酸イオンの電解質溶液についても浸漬処理を行う。特に硫酸イオンによる劣化は2~3ヶ月の経過時間を必要とされているため、計画的に浸漬処理を行う予定である。 また、前年度の粉砕実験より、粉砕媒体を用いずに粉砕試料どうしの衝撃あるいは剪断作用で粉砕を進行させる自生粉砕方式が比較的良好な結果となることから、以後の粉砕は撹拌ミルおよびボールミルについても自生粉砕方式を主に粉砕実験を行う。この方式では媒体摩耗等を考慮する必要がなくなるという利点がある。また、粉砕過程で定期的に微粉を除去し、その除去した質量と同じ試料を加えながら粉砕を継続することで、粉砕処理量の大幅な増加が得られることから、この多段階自生粉砕についての実験も行う予定である。 粉砕による骨材分離に関しては、酸浸漬処理後のコンクリート片を主に乾式で粉砕を行い、粉砕産物の粒子径分布、微粉の比表面積等の測定をした後、骨材を分離する。その分離には、目視法の他に傾斜振動法等を用いて行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は次の項目にしたがって行うが、研究費は主に実験材料費、実験器具・試薬費および発表のための旅費等である。 1)前年度と同様の方法で前年より大量の疑似コンクリートを作成し、材齢28日以上のコンクリートをジョークラッシャーで粗粉砕し,実験試料を作製する。2)酸性物質の浸漬処理は、溶出カルシウムイオンの分離を考え、さらに浸漬時間を延長した処理を行う。その際、カルシウムイオンやpH変化と劣化反応の関係を検討する。また、硫酸イオンを含む電解質水溶液による浸漬では、内部からの膨張による劣化過程の観察も合わせて行う。3)それぞれの浸漬処理後のコンクリート片を撹拌ミルおよびボールミルにより乾式自生粉砕を行い、粉砕産物の粒子径分布の調査後、骨材の分離をして骨材分離度を測定する。なお、骨材の分離に関しては、円形度・球形度の変化から、分離に効果的な傾斜振動法、水平振動法、傾斜コンベア等の分離法も検討する。 以上のような、実験研究を総括し、リサイクル骨材のより高い分離度が得られるリサイクルシステムの基本設計を行い、得られた結果を取りまとめ成果の発表を行う。
|