前年度のまでの結果を踏まえて、酸溶液の浸漬による化学的劣化処理後の骨材回収には撹拌ミルによる湿式の自生粉砕操作を行うこととした。なお、実際の骨材回収の実験に先立ち、酸溶液浸漬によるコンクリートの劣化状況を把握するため、その強度変化を実際に調査をした結果、酸浸漬によって劣化は進行し、明らかにコンクリートの強度は低下することを明らかにした。 次に、塩酸・硝酸・硫酸の3種類の酸溶液および硫酸アンモニウムおよび硫酸ナトリウムの2種類の硫酸塩溶液による浸漬処理による劣化処理を行った。その時の浸漬処理条件は予備実験の結果から、pHが約7程度になるまでの中和時間とした。撹拌ミルによる骨材回収操作では、酸浸漬処理のない場合に比べて回収率は向上するものの、その割合はまだ低く、実際のプロセスとしての利用は難しいと思われた。また、硫酸塩溶液は酸溶液ほどの効果を示さなかった。しかし、酸浸漬処理の回数を3回と増加させた場合および酸濃度を3倍にした場合では、回収率に与える効果は大きく、約70%もの骨材回収率を示すまでになった。この値は、初期の粗粉砕段階での骨材回収率を含んでいないため、プロセス全体で見ると骨材回収率は70~80%程度になることが明らかになった。 さらに、このようにして回収した再生骨材をJIS基準に基づいて評価を試みた。その結果、骨材吸水率は3%以下であり、使用箇所の制限のない良質な再生骨材に分類されることも明らかになった。 このように、コンクリートの化学的劣化反応と撹拌ミルによる自生粉砕操作を利用した廃コンクリートからの骨材の新しいプロセスは、これまでの加熱すりもみ法と同等かそれ以上の回収率を示す結果となった。これらの結果は、東日本大震災後の急がれるインフラ整備における骨材不足問題を解消する有効な技術の一つになるものと思われる。
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