研究課題/領域番号 |
23656485
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 大知 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50447421)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 膜分離 / 再生医療 / 膜乳化 / 人工赤血球 / ヘモグロビン |
研究概要 |
今年度は、細孔モデルを用いた透過性に関するオーダリング計算を実施し、人工酸素運搬体内の酸素、ヘモグロビンの反応拡散方程式を数値的に解くことによって、本研究の目的である灌流培養による組織再生のために必要とされる人工酸素運搬体の期待性能の評価に成功した。 この計算に基づいて、まず高濃度(10%)のヘモグロビン水溶液の単独での膜乳化条件の検討を行ったが、乳化剤等の様々な検討を行ったにも関わらず、安定なエマルションを得ることができなかった。そこでヘモグロビン水溶液をアルブミンと共に膜乳化することを検討し、アルブミンをヘモグロビンに対して10%から200%加えた広範な領域において安定したエマルションが得られることが明らかになった。さらにグルタルアルデヒドで架橋することによって、サイズが数ミクロンで均一な粒度分布を持ち分散安定性に優れた、ヘモグロビン粒子を作製することに成功した。 さらにヒト肝細胞株であるHepG2をプレート培養し、本粒子を添加して2日後に生細胞と死細胞を染色して、共焦点顕微鏡で観察した所、高い生体適合性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各項目毎に評価する。まず、SPG膜乳化によるヘモグロビン粒子の作製に関しては非常に成功し、進捗度100%である。細孔モデルによる粒子透過性の計算も実施し、進捗度100%である。酸素の反応拡散計算も数値計算ソフトgPROMSを用いて実際に行い、進捗度は100%である。人工赤血球の粘度測定はまだ全てのサンプルについて行っておらず、進捗度は30%である。その代りに2年度目に実施する予定であったプレート培養による毒性評価を前倒して一部行った。全体を通しておおよそ予定通りに進捗し、順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究の遂行も、実験計画からの変更はほぼなく、予定通り遂行する。主に作製した人工赤血球の機能・毒性評価を中心に研究を推進する。一つ目の課題は、電子線照射エッチング膜(Nuclepore、Cyclopore膜)透過試験による人工赤血球の微細流路透過特性の評価である。細孔モデルの計算結果と比較検証しながら、最適人工赤血球粒径と疑似毛細血管流路径の関係を、膜透過実験により明らかにする。二つ目の課題は、酸素解離曲線挙動の評価であり、各種動物由来ヘモグロビンの酸素解離曲線は報告されており、種々の条件で作製された本人工赤血球が、原料のヘモグロビンと同等の酸素解離挙動を示すことを実証する。三つ目の課題は、肝細胞培養株HepG2のプレート培養、及び灌流培養による低細胞毒性の実証であり。プレート培養、及び灌流培養により、本人工赤血球を添加した際の、アルブミン産生能・細胞生存率測定を検証し、超低毒性を実証する。膜乳化後のヘモグロビン固定方法で、初年度計画では光重合を用いてヘモグロビンを封入する予定であったが、初年度はアルブミン添加法とグルタルアルデヒド架橋を用いた手法に変更した。当初の予定に加えて、本年度にこの方法についての検討も行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は物品費として、800,000円を予定している。ヘモグロビン、アルブミン、架橋剤、モノマー、開始剤、界面活性剤等、各種化学薬品が必要である。さらに細胞を培養するための培地、血清、アッセイ試薬、ピペット等各種消耗品を計上する。国内学会発表旅費として、200,000円を計上し、論文発表の英語校正等で200,000円を計上する。
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