本研究では、テフロンであるPTFEを溶かす目的に特化した溶媒を人工的に作り出すことを試みた。この目的に特化した溶媒を作り出すために、ここでは人工的にデザイン可能な溶媒であるイオン液体を用いた。イオン液体は、有機カチオンと有機あるいは無機アニオンからなる常温で液体の“塩”であり、物性を人工的に制御しやすいこと、揮発性がほとんどないこと、高温(~200度)でも化学的に安定であること、様々な物質を溶解するよう分子設計可能であること等の特徴を有する。提案者は、フッ素を高含有するイオン液体であればPTFEを溶解させうるのではと考えた。そこで、パーフルオロカーボン鎖を有するイオン液体を新規に合成し、PTFEの可溶化を目指した。具体的には、イミダゾリウム系イオン液体における、有機カチオン(イミダゾリウムイオン)にパーフルオロカーボン鎖を導入し、またアニオンにフッ素を高含有するTFSA(bis(trifluoromethanesulfonyl)amide)からなるイオン液体を種々デザインし、合成した。PTFE粉末を、これらイオン液体に様々な濃度でになるように添加し、250℃、24時間で溶解を試みた。PTFE粉末の膨潤は確認されたが、残念ながら完全な溶解には至らなかった。
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