研究課題/領域番号 |
23656492
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大村 直人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50223954)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 化学工学 / 流体 / 混合 / 異常輸送 / プロセス強化 / 変動操作 / 撹拌操作 / 非線形動力学 |
研究概要 |
テイラー渦流反応装置を用い、蛍光染料をトレーサーとした拡散実験を行った。この拡散現象を1次元拡散モデルで表し、モデル中の有効拡散係数により、実験結果を評価した。実験における初期拡散過程で算出した有効拡散係数を用いて、拡散過程をシミュレーションを行ったところ、シミュレーションで得られた結果に比べ、実際の物質輸送は、きわめて迅速に起こることが明らかになった。このことにより循環流が渦セル構造を持つ流動パターンにおいて、物質輸送が高速化する異常輸送現象を確認した。 次に、テイラー渦流に類似の循環流パターンをもつタービン翼および、大型翼を用いた混合・粒子分散実験を行った。撹拌翼の回転による周期的摂動が物質輸送性能に大きく関わること、撹拌翼の通過による周期摂動に加え、温度場を非定常に変化させることで物質輸送が飛躍的に促進することを明らかにした。 テイラー渦流反応装置を用いた実験では、時間的な摂動として圧力振動など脈動の付加、空間的な摂動として内円筒にリブの設置および、軸方向に温度の変化を付加することで、物質輸送がどのように促進されるかを現在調査している。 数理モデルについては、前述の1次元拡散モデルに加え、2次元ハミルトン力学系のモデルによるシミュレーションについて検討中である。さらに、粒子運動挙動を実験的に解析し、この解析データに基づき、確率論をベースにしたネットワーク型のモデルの構築にも取り組んでいる。 平成24年度の計画であったテイラー渦流反応装置を用いたデンプンの連続加水分解プロセスについて、反応プロセスを提案し、現有装置の改良、測定系の整備を完了し、実験を行った。この結果、内円筒を回転させない通常の管型反応器に比べ、還元糖の収率が2倍程度向上すること、デンプン量を増加させた高濃度の懸濁液系でもプロセスを安定的に運転できることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値シミュレーションによる外部ノイズ(摂動)が異常輸送に及ぼす効果については、異常輸送を促進させる最適な外部ノイズの与え方の決定までには至っていないが、テイラー渦流装置および、撹拌槽による実験で、異常輸送の促進について多くの知見が得られた。これらの知見をもとに高効率撹拌のための撹拌翼の形状や撹拌操作の探査も進めている。さらに、平成24年度開始予定であった、テイラー渦流装置を用いたデンプンの酵素加水分解反応の実験、空間的変動操作を組み入れた撹拌装置による乳化重合反応の実験も開始しており、一部成果も出ている。 以上を鑑み、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
数値シミュレーションによる外部ノイズ(摂動)が異常輸送に及ぼす効果については、異常輸送を促進させる最適な外部ノイズの与え方の探査を引き続き行う。また、確率論をベースにしたネットワークモデルを始め、数理学的モデルの構築を進める。 テイラー渦流反応装置を用いた実験では、脈動流の付加、空間的温度変動の付加により、物質輸送がどのように影響されるのかをさらに詳細に調査する。また、デンプンの加水分解反応においても、脈動流の付加、空間的温度変動の付加により、反応性能の向上が達成できるかを検証する。 さらに、これまで得た知見をもとにして、新規な撹拌翼の開発に挑戦する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
テイラー渦流装置、撹拌槽を用いた実験のための試薬類、ガラス器具類などの物品費:700千円(50万円以上の備品なし) ポーランドで開催のEuropean Cinference on Mixing、化学工学会秋季大会および、年会の参加のための旅費等:500千円 論文校閲、論文投稿料:100千円
|