研究課題/領域番号 |
23656494
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉田 昌弘 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (50315397)
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研究分担者 |
愛甲 涼子 鹿児島大学, 理工学研究科, 教務職員 (50244265)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロカプセル / 徐放制御 / 電場応答 / 機能性素子 / 液晶モノマー |
研究概要 |
本研究においては、外部刺激として電場のみに応答するインテリジェントマテリアルとしてマイクロカプセルの機能付与に着目した。温度やpHという外部刺激に応答するマイクロカプセルに関しては、ポリマーの化学構造や化学組成などの面から物性を制御しようとする分子設計という考え方に基づいて研究報告があるが、電場による徐放制御を可能にし、徐放の有限値コントロールを実現できる刺激応答性マイクロカプセルに関しての報告例はない。本研究では、電場に鋭敏に応答する不斉炭素を有する強誘電性側鎖型液晶素子(液晶モノマー)を効率よく設計・合成し、これらを用いた機能性マイクロカプセルを開発する。開発されたマイクロカプセルの構造的物性評価を行うとともに、電場による有限値コントロールの実現を可能にすることが最大の目的である。平成23年度では、液晶モノマーの最適設計と合成を行うとともに、合成の効率化を検討した。機能性マイクロカプセル調製において、マイクロカプセルの外殻物質の一部を構成する。液晶モノマーが重要な役割を果たす。従って、電場に応答するのに最適な強誘電性を有する液晶モノマーの設計・合成が重要課題となる。ここで合成するモノマーに要求される分子構造上の必要条件とは、電場に極めて鋭敏に応答し、相転移するようなメソゲン基(芳香環をエステル結合でつないだもの)と分子の自由度を向上させるために側鎖型構造を取り入れることである。さらに、液晶モノマー末端に不斉を導入することにより、外部刺激(電場)に対して鋭敏な応答が可能となる。液晶モノマーそのもの電場応答の基礎物性(分子配向性等)や組織観察について評価した。また、合成に伴う収率向上のための効率化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するために液晶モノマーの最適設計と合成の効率化を検討した。ここで合成する液晶モノマーに要求される分子構造上の必要条件とは、電場に極めて鋭敏に応答し、相転移するようなメソゲン基と分子の自由度を向上させるために側鎖型構造を取り入れ、さらに、液晶モノマー末端に不斉を導入することにより、電場に対して鋭敏な応答が可能となる強誘電性液晶モノマーを合成することができた。収率向上の点ては課題が残されているが、合成できた点を考慮すると、計画は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに合成した液晶モノマーの収率向上のための検討は引き続き行う予定である。合成手法の高効率化としては、3ステップ合成および高収率を目指す予定である。次年度以降、液晶モノマーを外殻に導入した電場応答機能による有限値徐放マイクロカプセルを開発し、その特性を定量的、定性的に評価する予定である。液晶モノマーとスチレン等のモノマーを用いて、共重合を行うことにより液晶性素子を外殻骨格に導入し、それを自己組織化させたマイクロカプセルを調製することを計画している。電場による徐放コントロールを評価するために徐放対象物質として電荷を有しない水溶性の芯物質を利用する予定である。液晶ポリマー骨格を有する機能性マイクロカプセルについて、その電場依存性、熱特性及び形状安定特性(粒径分布、表面形状、膜厚)に及ぼす調製条件の影響を検討し、本マイクロカプセルの特性を明らかにする。さらに得られる基礎実験の結果から、電場応答にともなう液晶ポリマー骨格(カプセル外殻)の膨潤-伸縮挙動変化とカプセル膜からの芯物質の有限値徐放挙動に対する詳細な検討とそのメカニズムの解明を行うことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
液晶モノマーの高効率化に関する研究とともに、前年度までに合成した液晶モノマーを外殻に導入した電場応答機能による有限値徐放マイクロカプセルを開発し、その物性を定量的、定性的に評価するために研究費を主として使用する。
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