本研究では、ウィルスの立体構造を特異的に認識し、ただちにシグナルを放出する機能を付与した機能性材料を創製し、リアルタイム性に優れた高感度ウィルス検出システムを構築するために、(1)ウィルスを認識・捕捉するポリマーブラシの設計、(2)ウィルス認識時のシグナル放出機構の確立、および(3)シグナル検出法の確立を目指す。 昨年度は、ポリエチレン製多孔性中空糸膜に放射線グラフト重合により、グリシジルメタクリレートポリマーブラシを調製し、そのポリマーブラシに付与する官能基として、ヒトインフルエンザ表面に存在するヘマグルチニンと特異的に結合するシアル酸の導入を検討し、イミノ二酢酸二ナトリウム水和物(IDA)と1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を先にカップリング反応させた後、グリシジルメタクリレートポリマーブラシと反応させる方法が有効であることを示した。 本年度は、その重合法を改良して、シアル酸転化率を昨年度の9.8%から31.1%まで向上させ、膜1gあたり1.5mmolという非常に高い官能基密度を達成した。また、シグナル物質として銅(II)イオンについて検討し、シアル酸固定化ポリマーブラシに吸着することを確認した。銅(II)イオンが、特定のペプチド、過酸化水素、酸素が存在する環境で発生する活性酸素の生成量を、発光試薬を用いて、ルミノメーターにて測定可能なことを確認した。
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