研究課題/領域番号 |
23656498
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
迫口 明浩 崇城大学, 工学部, 教授 (30196141)
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キーワード | 微粒子 / 貫通型細孔 / マルチエマルション / 固体化酵素 / 糖 / マイクロリアクター / 薄膜 |
研究概要 |
本研究課題では、マルチエマルションの水相(緩衝液)に酵素、その固定化担体であるポリマー(ポリエチレングリコール等)および糖類(トレハロース等)の3成分を溶解させ、このO/W/O型マルチエマルションを凍結乾燥させることで、貫通型細孔を有する微粒子状の固定化酵素を創製することを目的としている。 平成25年度では、前年度までに開発された貫通型細孔を有するポリマー製微粒子に固定化された酵素の活性に及ぼす調整条件の影響をさらに詳細に実験的に明らかにしつつ、得られた固定化酵素をマイクロバイオリアクターに応用するための基礎的検討を行う予定であった。しかし、酵素活性を定量的に評価するための分析装置のトラブルから、酵素活性の定量的評価を行うことが困難となったため、マイクロバイオリアクターの微小流路内への酵素の固定化に関する実験的検討を中心に行った。 まず、これまで固定化担体としてポリエチレングルコールを主に用いてきたが、他のポリマーについての検討を行った。とくに、多糖類であるペクチンを用いてO/W/O型マルチエマルションを凍結乾燥させたところ、非水媒体に対する耐性とハニカム状の細孔を有する微粒子が得られた。しかし、有機溶媒中でのエステル合成をモデル反応とした酵素活性の確認を実験的に充分行うことができなかった。 さらに、マイクロバイオリアクターへの酵素の固定化法として、微小流路内への薄膜の形成に挑戦するための基礎的検討として、水溶性ポリマーの溶液を用いた浸漬法によるガラス板表面への薄膜形成を試みた。その結果、膜厚7~10μmの細孔を有する薄膜を形成することができた。今後、O/W/O型マルチエマルションを凍結乾燥させて得られた微粒子とポリマー水溶液(酵素、糖を含有)を用いた浸漬法で得られた薄膜の固定化酵素としての特性を比較検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、マルチエマルションの溶液構造を利用した貫通型細孔を有する微粒子の新たな調製法を開発し、この微粒子を固定化酵素として、とくにマイクロバイオリアクターの開発へ展開することを目指す。 平成23年度においては、担体として用いたPEGの濃度などを最適化して得られた貫通型細孔を有する微粒子にリパーゼSMとスブチリシンを固定化したところ、有機溶媒中における酵素活性の発現に成功し、さらに、調製時にトレハロースやリビトールなどの糖を添加することでさらに酵素活性を増大させることができた。 平成24年度では、プロテアーゼとしてスブチリシンとα‐キモトリプシンなどを選択し、さらにスブチリシンに対して添加する糖の影響を検討した。その結果、有機溶媒中で酵素活性を発現する貫通型細孔を有する微粒子の調製に成功した。とくに、固定化スブチリシンへのキシリトールの添加によって特異的な酵素活性が発現することを見出した。すなわち、本固定化法はリパーゼおよびプロテアーゼの有機溶媒中における酵素活性発現に有用であり、糖類の添加方法を最適化することで他の酵素についても有機溶媒中での利用が可能な固定化酵素を実現することができるものと期待される。 平成25年度では、分析装置のトラブルから酵素活性の定量的評価を行うことが困難となったため、マイクロバイオリアクターの微小流路内への酵素の固定化に関する基礎的検討を中心に行った。まず、固定化担体として多糖類であるペクチンを用いてO/W/O型マルチエマルションを凍結乾燥させたところ、非水媒体に対する耐性とハニカム状の細孔を有する微粒子が得られた。さらに、マイクロバイオリアクターへの酵素の固定化法として、水溶性ポリマーの溶液を用いた浸漬法によるガラス板表面への薄膜形成を試みたところ、膜厚7~10μmの細孔を有する薄膜を形成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策)平成25年度までに検討した3成分(酵素、ポリマー担体、糖類)に加えて、新たな3成分を用いて、O/W/O型マルチエマルションの凍結乾燥によって得られる微粒子を作製し、この微粒子の形態を顕微鏡観察し、貫通型細孔を有するための条件を解明する。得られた種々の酵素を含有する微粒子の非水媒体中でのエステル合成を試みて酵素機能を検討する。 さらに、酵素活性および形態の異なるいくつかの微粒子を選び、微小流路へ充填してマイクロバイオリアクターとしての基礎的検討を行う。また、3成分を含有する溶液をマイクロバイオリアクターの微小流路内に塗布して薄膜を形成させ、酵素が活性を発現するための調製方法および条件を実験的に明らかにする。 (次年度使用額が生じた理由と使用計画)平成25年度に、マルチエマルションを活用した貫通型細孔を有する微粒子に固定化された酵素の活性をガスクロマトグラフで評価する予定であったが、これまでの応急修理ではこのガスクロマトグラフの正常運転が困難となり、たびたび実験が中断された。そのため、計画を変更し、エマルションの調製条件や処理法を種々変化させ、貫通型細孔を有するポリマー製微粒子さらには薄膜の作成法を検討することとしたため、平成25年度において未使用額が生じた。 そこで、平成26年度、酵素活性の評価において不可欠な分析機器であるガスクロマトグラフの徹底的な修理(または新規購入)と、このようにして正常運転ができるようになったガスクロマトグラフを用いたポリマー製微粒子や薄膜に固定化された酵素の活性の評価を行うために、平成25年度の未使用額をその経費に充てることを計画した。 この計画を遂行するために、本研究の補助事業期間の延長を申請したところ、本申請が承認されたので、平成25年度の未使用額を使用して上述したように平成26年度に研究を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、マルチエマルションを活用した貫通型細孔を有する微粒子に固定化された酵素の活性をガスクロマトグラフで評価する予定であったが、これまでの応急修理ではこのガスクロマトグラフの正常運転が困難となり、たびたび実験が中断された。そのため、計画を変更し、エマルションの調製条件や処理法を種々変化させ、貫通型細孔を有するポリマー製微粒子さらには薄膜の作成法を検討することとしたため、平成25年度において未使用額が生じた。 平成26年度、酵素活性の評価において不可欠な分析機器であるガスクロマトグラフの徹底的な修理(または新規購入)と、このようにして正常運転ができるようになったガスクロマトグラフを用いたポリマー製微粒子や薄膜に固定化された酵素の活性の評価を行うために、平成25年度の未使用額をその経費に充てることを計画した。 この計画を遂行するために、本研究の補助事業期間の延長を申請したところ、本申請が承認されたので、平成25年度の未使用額を使用して上述したように平成26年度に研究を実施する。
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