研究課題/領域番号 |
23656499
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
荒井 正彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60125490)
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キーワード | 機能性炭素 / 窒素ドープ / メタルフリー触媒 |
研究概要 |
本年度は活性炭(AC)の他にポリアクリロニトリルから空気焼成して調製した炭素種(PAN)を出発原料として,窒素ドープ試料を作製した。窒素ドープは,アンモニア処理,空気とアンモニア混合ガスによるアンモオキシデーション処理,一酸化窒素処理で行った。これらの窒素ドープ炭素試料の触媒活性をベンズアルデヒドとシアノ酢酸エチルのKnoevenagel縮合,酢酸エチルとメタノールのエステル交換,およびキサンテンの空気酸化ついて調べた。Knoevenagel縮合の生成物であるシアノケイ皮酸エチルの収率の窒素ドープ法による違いは,ACとPANいずれの炭素種でもアンモオキシデーション処理 ≒ アンモニア処理 > 一酸化窒素処理 > 未処理であった。また,この反応に対する触媒活性は出発炭素材料によっても異なり,ACよりもPANの方がより高い活性の触媒を与えることが分かった。X線光電子分光法により炭素表面にドープされた窒素の量と状態を調べたところ,種々の窒素ドープ炭素のKnoevenagel縮合に対する活性はピリジン型表面窒素種の量と良い相関が認められ,この型のドープ窒素が活性発現に関与していると考えられた。Knoevenagel縮合とは異なり,PANに窒素ドープした触媒はエステル交換とキサンテン酸化に全く活性を示さなかった。これらの試料のX線光電子分光測定の結果から,これら二つの反応に対する活性には単にドープした窒素の種類と量だけではなく,表面酸素種の量も重要であり,表面C=O種の量が多いと低い触媒活性となることが分かった。以上のように,窒素ドープ炭素の出発物質を変えるとそれらが活性を示す対象反応も異なることが明らかになった。炭素網面構造内の電子は共鳴構造を持つと考えられるが,その構造が窒素種や酸素種の導入でどのように変化するのかが触媒活性に重要であると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出発物質の異なる窒素ドープ炭素の触媒活性を調べた結果から,Knoevenagel縮合に対する活性発現にはピリジン型窒素種が関与していると考えられること,一方,エステル交換とキサンテン酸化に対する活性発現には,単にドープした窒素だけではなく,表面酸素種の種類や量も重要な因子であることを明らかに出来た。
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今後の研究の推進方策 |
窒素ドープ炭素材料が多機能的な触媒作用を持つためには,ドープ窒素種と表面酸素種の両者をコントロールすることが重要であることを示すことが出来た。しかし,その詳細は十分には解明出来なかった。今後はこれを検討するために炭素網面構造の電子状態が窒素種や酸素種の導入によりどのように変化するのかを計算化学的手法で検討したい。また,これと同時に,窒素ドープ炭素材料を他の化学反応に応用して有効性の展開を図りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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