研究課題/領域番号 |
23656502
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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研究分担者 |
佐古 猛 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (20324329)
岡島 いづみ 静岡大学, 工学部, 助教 (40436910)
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キーワード | セルロース加水分解 / 亜臨界水 / 構造体触媒 / 無電解めっき / ルテニウム系触媒 |
研究概要 |
本研究は,亜臨界水の高い加水分解力をメタルハニカム型構造体触媒で制御・調整することで,非食料系セルロースをグルコースなどの糖アルコール類に高速で連続的に,かつ高効率に変換する加水分解反応場の創製を目的としている。 平成24年度は,年度の前半で亜臨界水による触媒反応場の物質変換特性が評価できる反応装置の製作を行ない,高温高圧系の反応操作パラメータが制御可能な反応装置を立ち上げた。そして,昨年度の検討において加水分解用として候補にあげたハニカム型Ru/Al2O3系構造体の調製条件のブラシュアップとその物性特性評価を行なった。さらに,他の触媒候補としてカーボン担持スルホン酸系触媒を取り上げ,この触媒創製とその物性測定,ならびにセルロースの加水分解特性について評価した。物性測定の結果と亜臨界水条件下における触媒安定性などの点から,目的とする亜臨界環境下の加水分解用としてはカーボン担持スルホン酸系触媒が好ましいものと判断し,この触媒の触媒物性の精査と基本分解特性の評価,および触媒の構造体化などを行なった。以下に今年度の結果をまとめる。 1.カーボン種としてActive Carbon(AC)を選定し,硫酸成分を蒸発乾固法によって担持したところ,所定量の硫黄(S)分を保持したAC-SO3H系触媒が調製できた。このことは触媒層のXPS測定とEDX測定から明らかにした。 2.試薬セルロースの加水分解反応特性について,反応温度:423~453K,圧力:1~5MPaで実施したところ,調製したAC-SO3H系触媒はセルロース分解活性を示し,グルコースの生成が確認された。 3.上記のAC-SO3H系触媒は粒状形であるため,フィン型構造体触媒形に触媒成分をディップ法で付着し,構造体触媒が調製できた。しかし,得られた触媒の分解特性はまだ目標数値には達しなかった。調製法の検討が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,前年度において課題として残った臨界流体の創製ならびに触媒性能評価装置の製作を年度前半の重点課題として取り組み,予定通りにその目的が達成できた。装置は縦型ラック形式とし,亜臨界状態の精緻な制御とモニタリングのために加圧系と昇温系の操作に工夫を加えた。そして,前年度に調製したRu系構造体触媒のセルロースの加水分解特性について評価を実施し,当初の計画スケジュールに沿った進行となった。構造体触媒の創製に関する検討内容も,ほぼスケジュール通りであった。すなわち,前年度に開発したRu系触媒の評価とその結果を反映した触媒チューニングの実施,他の触媒成分系の文献調査とそこから判断された候補触媒系の試作,および構造体化,そしてセルロースの加水分解特性の評価を実施した。また,それぞれの触媒系に関したXRD測定やXPS測定による触媒成分系の状態観察や,SEM観察による触媒構造の把握などの物性測定についても順調に実施することができた。 以上のことから,本年度の研究推進はほぼ計画通りに進行しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究実施内容を以下に示す。 ① ハニカム型構造体触媒によるセルロースの加水分解特性の調査 前年度までに実施して得た,また蓄積してきたハニカム型構造体触媒に関するセルロース分解特性データをもとに,引き続き最適なセルロース加水分解用触媒探索を実施する。分解特性の調査ポイントはこれまで通りであり,加水分解が主となる領域において調製した構造体触媒の分解特性を評価する。その際には,転化率とグルコース選択率の向上をもたらす触媒成分と亜臨界水の創生条件(温度や圧力)の組み合わせなどを調査する。加えて,前年度までの実施で得られている及び今年度に実施する触媒物性に関する情報をもとに,触媒機能が亜臨界水の加水分解特性に及ぼす効果を触媒化学と臨界流体工学の視点から評価する。伝熱性の違いやセル密度の違い(物理的影響),原料の滞在時間の違いが分解特性に及ぼす影響についても調査する。なお,セルロース原料は市販の試薬を用いる。 ② 亜臨界水による加水分解用の構造体触媒場の構築指針に関する提言 最終年度にあたる今年度は,三年間の実施において得られる知見をもとに,亜臨界水によるセルロースの加水分解用の構造体触媒反応場に関した設計指針を提言する。特に,反応場の伝熱特性が及ぼす臨界状態下での反応性,そして触媒機能性との関連性に留意した提言を計画する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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