本研究では、太陽光に含まれる有害な紫外線の光量を、吸収スペクトル測定により正確かつ簡便に計測することのできるケミカル紫外線センサーを開発する。平成24年度は、スピロピラン分子の紫外線吸収による開環反応に基づいた分子設計により、紫外線センサー分子の開発に取り組んだ。特に、以下の項目に対して興味深い結果を得た。 スピロピランにアジド基を結合させた分子は、熱を加えた場合や可視光(>400 nm)を照射した場合には無色のままである。ところが、紫外線(<400 nm)を照射した場合には、溶液は直ちに赤色を呈すことを見出した。この発色応答の量子収率は10%以上であり 、極めて感度よく紫外線に応答して着色することが分かった。NMRならびにIR分析の結果、紫外線照射を行った溶液には、二分子のスピロピラン分子がアゾ結合した種が生成しており、かつ開環状態のスピロピラン部位を有することが分かった。すなわち、アジド部位の紫外線吸収に基づくアゾ結合の生成にともなってスピロピラン部位が開環し、赤色を呈すると考えられる。このような選択的な紫外線応答型の挙動は、紫外線光量計の開発に対して重要な指針を与えると考えられる。
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