研究課題/領域番号 |
23656504
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白石 康浩 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 准教授 (70343259)
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研究分担者 |
平井 隆之 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 教授 (80208800)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 光触媒 / 有害物質 / 再資源化 / バイオマス / 二酸化チタン |
研究概要 |
本研究では、バイオマスあるいは有害有機化合物から有用物質を生産するための光触媒プロセスの開発に取り組んでいる。今年度(平成23年度)は、ニトロ化合物の水素化によるアミン合成、有害シアン化合物の脱窒素化、有害ハロゲン化合物の脱ハロゲン化、などの物質変換についての研究を進めた。これらの反応に対して、それぞれ、ルチル型二酸化チタン、Pdナノ粒子を担持したP25二酸化チタン、ならびにPdおよびPtからなる合金ナノ粒子を担持したP25二酸化チタンが極めて選択的かつ効率よく目的の物質変換を進めることを明らかにした。ニトロ化合物からのアミン合成に対しては、これまで光触媒としては不活性と考えられてきたルチル型二酸化チタンが極めて高い活性を示し、従来の光触媒の考え方を一新する学問的にも極めて興味深い知見を得た。この活性は、ルチル表面の格子欠陥サイトが極めて強い還元サイトとなるためであることを明らかにした。さらにこの反応では、種々の還元性置換基を有するニトロ化合物のニトロ基だけを選択的に還元することが可能であり、化学選択的な還元を実現できることを見出した。また、シアン化合物の脱窒素に対しては、アルコールをプロトン源とする本光触媒反応が、従来の分子状水素をプロトン源とする反応よりも活性が高く、常温下でかつ安全な脱窒素プロセスとなることを見出した。また、脱ハロゲン反応に対しては、合金ナノ粒子を用いることにより4倍以上も活性が向上する興味深い知見を得た。光触媒による合金効果を報告した例はほとんどなく、今後の光触媒材料の設計に対する重要な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ルチル型二酸化チタンを光触媒として用いることにより、これまで困難であったニトロ化合物の還元が極めて選択的かつ効率よく進行することを明らかにした。種々の分光分析により、ルチル型二酸化チタン表面の格子欠陥サイトがこの高い光触媒活性に重要であることが分かってきている。これらの知見を応用すれば、様々なバイオマス物質の効率的変換が可能になる感触を得ている。それゆえ、区分(2)に該当すると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
代表的なバイオマス物質であるグリセロールの有用物質への変換を目的とした研究を進める。今年度明らかにした半導体上の格子欠陥サイトの光触媒活性に着目し、グリセロールの酸化脱水素によるジヒドロキシアセトン合成、あるいは還元脱水によるジヒドロキシプロパン合成を軸とした研究を進めていく。また、金属ナノ粒子と半導体上の格子欠陥サイトを隣接させた新たな光触媒活性サイトを構築し、より効率のよい物質変換を目指す。また、ニトロ化合物の還元やハロゲン化合物の脱ハロゲン化に対しては、太陽光照射下でこれらの反応を進める新たな反応系を完成させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に請求した研究費は、当初の予定どおり、実験試薬あるいは反応用光源に用いるキセノンランプの交換費用をはじめとする消耗品、ならびに成果発表のための旅費として用いる。
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