次世代透明性導電薄膜および太陽電池における半導体材料として,酸化亜鉛の応用に期待が高まっており,これまでに多くの合成例が報告されている.しかし,スパッタリング法やMOCVD法など,スケールアップが困難な手法が大き.酸化亜鉛の利点である経済性を活かすためには,より簡便な手法で酸化亜鉛の合成を可能にする必要がある.本研究では無機有機複合体を前駆体として低温で酸化亜鉛薄膜を合成する手法を開発してきた.本年度は複合体に含まれる有機体を鋳型としてメソ構造を有する酸化亜鉛の合成手法を確立した. 亜鉛/界面活性剤の複合体を基板に塗布したものを空気雰囲気下で焼成し,メソポーラス酸化亜鉛の合成を行った.温度上昇を緩やかに行うことで酸化亜鉛の結晶化と有機鋳型の熱分解を1度の操作で行った. FE-SEM観察の結果,10-20 nmの細孔が確認でき,これはXRD測定によって確認した周期構造とほぼ同じサイズである.これらのことから有機鋳型の除去によって細孔構造をもつ酸化亜鉛が合成されたことがわかった. メソポーラス酸化亜鉛の低効率は0.83 ohm cmであり,ゾルゲル法で合成した酸化亜鉛の10倍以上の導電性を示した.酸化亜鉛の導電キャリアは結晶表面に局在する酸素欠損であるため,多孔質化によって表面積が増大した結果,導電キャリアである酸素欠損も増えて抵抗が減少したと考えられる.さらに,AlおよびBを含む化合物を複合体に混ぜることで異種元素の導入を行ったところ,それぞれ0.082 ohm cmおよび0.017 ohm cmの抵抗率を示した.これによって,非常に簡便な手法で異種元素の導入による酸化亜鉛の導電性制御が可能となった.
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