研究概要 |
石炭ピッチを各種有機溶媒に溶解させて、それぞれの溶液の蛍光スペクトルを測定したところ、溶媒の極性が高くなるほど、発光波長が長波長シフトすることが明らかになった。これは石炭ピッチを溶解させる溶媒を変えることにより、溶存してくる発光成分が異なるため発光波長も変わったと理解することができる。これらの溶液を発光層として用いた有機EL素子を作製した。ITO基板に対してPEDOT/PSSをスピンコートし、さらに石炭ピッチの溶液をスピンコートにで塗布、ここにLiFおよびAlを電極として蒸着した。この素子を用いてEL特性を解析した所、THF溶液を用いた時に最高で22.4cd/m^2というオレンジ色の発光を観測した。他の溶媒で抽出した際は輝度がそれほど高くなかった。 次に分取スケールの薄層クロマトグラフィーにおいて、エーテルとヘキサンの混合溶媒系を展開溶媒として石炭ピッチのTHF溶液をRf値で1.0-0.75,0.75-0.50,0.50-0.25,0.25-0の4つの画分に分離し、それぞれの画分から得られた石炭ピッチ成分の溶液を調製した。これらの溶夜を用いて先と同様有機EL素子を作製し、発光特性を解析したところ、Rf値0.75-0.50の画分が最も高い輝度19.7cd/m^2を示した。また、この画分をさらにTHFに溶解させた後に、展開溶媒としてジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒を用いて再度分離を行った。この二度目の分離におけるRf値0.75-0.50の画分を用いてEL素子作製を行った所、青緑の発光が観則され、輝度は176cd/m^2に達した。すなわち、当初の単純なTHF溶液を用いて作製したEL素子にくらべて発光輝度が→桁上昇することが明らかになった。これらの結果は、石炭ピッチを適切に分離することでEL素子の発光波長および輝度を制御することが可能になることを示している。
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