研究課題/領域番号 |
23656510
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
和田 健司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10243049)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | イリジウム / 酸化セリウム / グリーンケミストリー / N-アルキル化 / チタン / シリカ / エポキシ化 |
研究概要 |
より環境負荷やエネルギー消費の小さな有機合成プロセス開発の鍵となる環境対応型の新触媒の開発は、重要な課題である。特に金属錯体と固体担体との機能の相乗効果によって、想定外の触媒機能の創発が期待できる。そこで本研究では、表面と金属錯体のシナジーを活かすことによる特異的触媒機能の創発メカニズムを系統的に検討し、活性・選択性の支配因子を解明することで、従来とは異なる触媒活性・選択性を有する新しいタイプの環境対応型固体触媒開発の一般的方法論の確立を目指す。 今年度は、第一級アミンと1,4-ブタンジオール等のジオール類間の反応による直鎖アミノアルコール合成反応に有効な触媒を開発し、触媒調製法および前処理条件の最適化による生成物収率および選択率の最大化を図った。その結果、150℃で水素還元処理を施した酸化セリウム(セリア)担持イリジウム触媒が特に有効であり、500以上のTOFで高選択的に目的生成物が得られた。反応溶液へのイリジウム種の溶出は僅かであり、熱時ろ過試験の結果から反応は主に固体触媒表面で進行していると推察される。他の金属酸化物担体を用いて調製した触媒は本反応にはほとんど活性を示さなかった。 一方、均一系触媒としてチタン含有シルセスキオキサンを用いた、tBuOOHを酸化剤とするシクロオクテンエポキシ化反応において、シリカを添加することによる顕著な活性向上が認められた。回収したシリカのXPSおよび拡散反射UV-visスペクトル測定の結果、および不完全縮合シルセスキオキサンをモデル化合物とする検討結果から、シルセスキオキサン配位子とシリカ表面のシラノール基間での配位子交換が進行し、表面にチタン種が固定化され、これが高い触媒を活性を示すと推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の検討によって、担持イリジウム触媒による直鎖アミノアルコール合成において、高いTONを達成するなど、本研究開始段階の目標をほぼ達成している。さらに、チタン触媒におけるシリカの共存効果を明らかにし、その活性向上の原因をNMR等によって明らかにする等、一部で当初の計画以上に進展した成果を得ている。酸化物以外の担体の検討等が遅れているものの、おおむね順調に進展していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
イリジウム系触媒による含窒素化合物合成においては、さらに多様な反応への展開が期待される。また、チタン触媒については、過酸化水素水の適用やエポキシ化以外の反応への展開、さらにはチタン以外の金属種への展開についての検討が必要である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は電子的ネットワーク等の活用による旅費の抑制等により、約14万円を次年度に支出する。特に、英語論文校正謝金等に充当する予定である。
|