カーボンナノファイバーは,その構造に由来する特異な物理的・化学的特性を有するため,触媒への応用が検討されている.しかしカーボンナノファイバーの表面はグラフェンから構成されるため,化学的に不活性であり,それらの表面に金属ナノ粒子を担持することは難しい.また金属ナノ粒子をカーボンナノファイバー上に担持できたとしても,触媒反応条件下で容易に凝集する.そこでカーボンナノファイバーに金属ナノ粒子を担持し,さらにその金属ナノ粒子のシンタリングを抑制する技術が求められる. 本研究ではカーボンナノファイバー上に貴金属ナノ粒子を担持することを目的に,カーボンナノファイバーに各種処理を施し,カーボンナノファイバーの物理的・化学的修飾を試みた.その結果,カーボンナノファイバーを塩酸水溶液で処理してもカーボンナノファイバーの物理的・化学的特性は変化しないものの,硝酸水溶液で処理するとカーボンナノファーバー上に官能基が導入され,またこの処理を長時間行うことでカーボンナノファイバー上に直径3ナノメートル程度の細孔が生成することがわかった.そこで官能基化されたカーボンナノファイバーおよび細孔構造が導入されたカーボンナノファイバー上にPtを担持したところ,両カーボンナノファイバー上に直径2ナノメートル程度のPt粒子が担持されることが分かった.さらに硝酸で処理したカーボンナノファイバー上のPtナノ粒子は高温条件下でもシンタリングしないことがわかった.これはカーボンナノファイバー中の細孔がPt粒子の移動を抑制したためである.そこで調製に高温を必要とする合金粒子の調製をカーボンナノファイバー上で試みた.その結果,塩酸で処理したカーボンナノファイバー上には10ナノメートル以上の合金粒子が生成したのに対し,硝酸で処理したカーボンナノファイバー上には直径数ナノメートルの合金粒子が生成することが分かった.
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