研究課題/領域番号 |
23656516
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河原 正浩 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50345097)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 生体機能利用 / プロテオーム |
研究概要 |
本研究ではタンパク質間相互作用を細胞増殖シグナルで検出することを目標としている。本年度はこの応用を達成するための基礎となるキメラ受容体のデザインを行った。まず、既知の相互作用蛋白質としてRapamycin依存的にヘテロ二量体を形成するFKBP12(FK)とFRB(FR)を用いて、細胞外でのタンパク質間相互作用検出系を構築した。FKBP12またはFRBのいずれかを細胞外ドメインとして用い、これにエリスロポエチン受容体の膜貫通ドメインを連結した。さらに、細胞内シグナル伝達ドメインとして、IL-6受容体のgp130、IL-2受容体のβ鎖、γ鎖のいずれか(それぞれgp、β、γとする)を連結したキメラ受容体遺伝子を構築した。これらのキメラ受容体遺伝子をFKとFRがペアとなるように細胞に導入し、Rapamycinの存在の有無によるシグナル伝達分子のリン酸化レベルを比較した。その結果、FKβ+FRγ発現細胞ではIL-2受容体によって活性化されるSTAT5の強いリン酸化が見られ、FKgp+FRgp発現細胞ではIL-6受容体によって活性化されるSTAT3の強いリン酸化が見られ、いずれもRapamycin依存的であった。また、Rapamycinの毒性を阻害するS6Kinase2の変異体を共発現させたFKβ+FRγ発現細胞では、Ramamycin依存的に細胞が増殖した。一方、細胞質でのタンパク質間相互作用検出系も構築するために、FKBP変異体、トロンボポエチン受容体および細胞膜脂質アンカリングシグナル配列を連結した細胞質発現型キメラ受容体を構築し、同様に血球細胞株で発現させた。その結果、リガンドであるAP20187依存的に細胞増殖が確認された。以上より、細胞外、細胞質におけるタンパク質間相互作用を細胞増殖活性により検出できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はタンパク質間相互作用を細胞増殖シグナルで検出するための基礎となるキメラ受容体のデザインとその最適化が目標であった。実際に細胞外、細胞質においてモデルタンパク質の相互作用を細胞増殖によって検出することに成功したことから、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に構築したキメラ受容体をベースにして、実際に標的蛋白質を選んでそれに対する相互作用タンパク質をcDNAライブラリーからスクリーニングする実験を行い、本研究の実用性を検証する。 また、モデルタンパク質を用いてキメラ受容体の分子デザインの最適化に関する実験と考察も並行して進め、上述のスクリーニング実験にフィードバックする。
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次年度の研究費の使用計画 |
キメラ受容体の発現ベクター構築に関しては、遺伝子を増幅するための合成DNA、および制限・修飾酵素、また、ベクター構築で用いる大腸菌用の培地・培養容器が必要である。また、動物細胞培養に関しては、構築した遺伝子の導入試薬、血清添加培地および培養容器が必要であり、相互作用スクリーニング後の遺伝子配列解析や相互作用解析用の試薬が必要である。これらの実験のために、物品費として使用する予定である。 また、化学工学会秋季大会、生物工学会、生化学会、動物細胞工学会での研究成果発表のために、旅費として使用する予定である。
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