本課題は,各種の抗原検出を迅速高感度に行うことができる新規免疫測定原理Quenchbody法の発展を目指したものである。これまで,部位特異的に末端近傍を蛍光ラベルした組換え抗体(一本鎖抗体scFvあるいはFab断片)を作製し,これをサンプルと混合して蛍光強度を測定することで,色素の抗体内在Trp残基によるクエンチとその解除に伴う蛍光強度の増加から各種抗原を高感度に検出できることが分かっている。そこで今回,検出プローブとして蛍光標識抗体結合タンパク質を用い,これと既存の精製抗体を結合させることでQuenchbody化することを目指した。 本年度は,前年度作製した,ヒトFab断片への安定な結合を期待した検出プローブである,Protein A (PA)とProtein G (PG)の各1個の結合ドメインをヘリックス形成(DDAKK)4リンカーを介して融合させたPAxPGタンパク質を,大腸菌を用いて大量に調製し,第一にその抗体結合能を表面プラズモン共鳴法を用いて解析した。その結果,予想外なことに,PAxPGが各種IgG,特に検出に多用されるマウスIgG1とIgG2aに,野生型PAあるいはPG(多数の結合ドメインを持つ)に比べても有意に強く結合することが見出された。また,予想通りPAxPGは市販のヒト抗ビメンチンFab抗体にも強く結合した。そこで蛍光色素TAMRA標識PAxPGと等モルのFabを混合した所,約8%のクエンチが確認され,さらにこれにビメンチンを加えたところ,有意なクエンチ解除が観察された。すなわち本検出原理の証明に成功し,上記の知見と併せて特許出願を行った。今後,PAxPGと抗体との結合様式を明らかにすると共に,色素とPA間のリンカー(長さ,配列)の最適化などにより,より大きな蛍光応答を目指したい。
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