研究課題/領域番号 |
23656522
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中野 秀雄 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (00237348)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 分泌生産 / 酵母 / ゲノムライブラリー |
研究概要 |
研究実績の概要産総研の佐原らより提供された酵母SPライブラリーに、リモートカッター制限酵素の認識配列をPCRにより付加したライブラリーを作製した。レポーターとして活性測定が容易な糸状菌由来beta-galactosidase(LacA)を用い、この成熟N末配列を含む15塩基をDNA合成し、2塩基突出した部位でリガーゼによる結合させた。PCRで融合DNA断片を増幅後、In fusionクローニングでレポーター配列全長とシグナル配列の融合物を酵母―大腸菌シャトルベクターに組み込み、大腸菌に導入してコロニーを形成させた。作製された組み換えプラスミドの一部についてシークエンス解析を行い、ライブラリーが設計通り作製されていることを確かめた。 次に大腸菌コロニーを十分な数かき集め、DNAを抽出後、S. cervisiaeの実験株に導入した。X-Galを含む培地で培養し、コロニー及びその周辺の色が付いているものを選んで、次に液体培養を行った。分泌量を測定し、合わせてDNA配列を調べ、酵母シグナルペプチドライブラリーからLacAの最適シグナル配列を見いだすことができた。この一連の作業を通じて、SPOTの様々な実験条件の最適化を行い、実験系を確立することができた。得られた成果を平成24年3月の日本農芸化学会にて発表した。 次に酵母に抗体を分泌発現させるため、その発現ベクターを構築した。しかしながらL鎖の分泌発現は確認できたものの、H鎖の分泌は確認できなかった。 白色腐朽菌のセルラーゼの一つである、セルビオヒドロラーゼは酵母ではほとんど分泌されない。そこで本手法により分泌可能にするシグナル配列の取得を試み、ライブラリーを大腸菌で構築し、酵母に導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の主要目的であるSPOT法の確立に関しては、モデル蛋白質のLacA分泌生産を用いた系で確立することができ本年度の主要目的であるSPOT法の確立に関しては、モデル蛋白質のLacA分泌生産を用いた系で確立することができた。しかしながら予定してた抗体の分泌においては、H鎖が分泌したいという予想外の事態に陥り、それを対象としたスクリーニングができなかった。そのため当初予定になかった白色腐朽菌の分泌シグナルスクリーニングの実験を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
予算に余りが生じた理由は、達成度で記述したように酵母のH鎖の分泌が見られず、そのスクリーニングが出来なかったためである。この原因を早急に解明し今年度に遅れた分を取り戻す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度で確立した酵母SPOTを用い、引き続き白色腐朽菌セルラーゼの分泌発現系に応用する。まずゲノム上の全シグナル配列のうち、細胞外、及び細胞表面に局在するシグナル配列44個に対してライブラリーを作製し、その分泌量をりん酸膨潤セルロースを基質とした酵素アッセイ、およびウェスタンブロッティング等の方法で、分泌タンパク量を測定する。もし十分な分泌が得られなかった場合には、その他の全シグナルペプチドに対してスクリーニングを行う。また抗体の分泌生産に応用し、その有用性を検証する。最初Fab抗体に対して検討し、次にはscFavなどの一本鎖抗体に対して上記と同様な検討を行う。 他の糸状菌への応用を目指し、Aspergillus oryzaeのシグナルペプチド配列の候補をSinganlPなどのソフトウェアを用いて抽出し、ライブラリーを構築し、抗体などの分泌発現系への応用を試みる。 また一般に発現が困難な膜タンパク質発現の効率化を目指し、GPCR発現システムへの応用を試みる。
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