研究課題/領域番号 |
23656523
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西島 謙一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10262891)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | トランスジェニックニワトリ / 糖鎖 / ワクチン |
研究概要 |
インフルエンザワクチンは発育鶏卵を用いた生産法が主流である。インフルエンザワクチン生産の際ウイルスが増殖する漿尿膜細胞は、ウイルス感染に必要なα2-6結合型シアル酸を持たないため、本来ヒトウイルスを増やすことが出来ない。漿尿膜細胞でα2-6結合型シアル酸を持つ鶏卵を生産できれば、これまでの変異型ウイルスではなく、ヒトウイルスそのものを用いたワクチン生産が可能となる。糖鎖改変トランスジェニックニワトリ作製のために、α2-6結合型シアル酸転移酵素遺伝子単独を発現するレンチウイルスベクターを作製した。レンチウイルスベクターを発生0-2日目の胚に感染させた際の遺伝子導入効率が低かったため、第一世代(G0)での解析をやめ、トランスジェニックニワトリ系統樹立に注力することとした。生殖腺より精製したニワトリ始原生殖細胞にin vitro でレンチウイルスベクターを感染させ、レシピエント胚に移植した。現在、性成熟を待っている段階である。次年度に第一世代ニワトリの交配を行い、トランスジェニックニワトリ後代を作製する予定である。将来精子・卵子に分化する始原生殖細胞に直接レンチウイルスベクターを感染させているため、効率よくトランスジェニックニワトリ後代が取得できることを期待している。 また、免疫系を強く刺激しワクチンの持続効果を高めるために、同様の手法でワクチンタンパク質にαガラクトース糖鎖を附加させる可能性を検討している。今年度はαガラクトース転位酵素(α1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ)遺伝子をマウスからクローニングした。今後、CMVプロモーター及びアクチンプロモーターによりαガラクトース転位酵素を発現するレトロウイルスベクターコンストラクトを作製し、漿尿膜細胞の糖鎖を変換できることを確認してゆく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスジェニックニワトリ後代取得のための遺伝子導入始原生殖細胞の移植実験は難易度も高く手間のかかる実験であるが、既に交配に用いる第一世代ニワトリを複数作製済みである。また、αガラクトース転位酵素遺伝子の取得は済んでおり、漿尿膜細胞の糖鎖変換を確認する準備が整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
α2-6結合型シアル酸転移酵素遺伝子単独を発現するトランスジェニックニワトリ後代取得を引き続き進める。また、αガラクトース転位酵素については、これまでの実験結果からトランスジェニックニワトリ後代の取得効率が高いことが期待されるレンチウイルスベクターは第一世代ニワトリにおける発現解析には不向きであることが示唆されたため、レトロウイルスベクターを作製してニワトリ初期胚に直接導入することで第一世代ニワトリ胚で戦略を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子導入用レトロウイルス・レンチウイルスベクターを引き続き作製し、ニワトリ胚・始原生殖細胞へ導入、解析してゆく必要がある。そのため、これらに必要な消耗品を中心に使用する予定である。ただし、経年劣化のためPCRなど遺伝子実験に必須の機器の更新が必要であり、一部はこうした機器の購入に充てる必要がある。消耗品のための費用を確保する必要性から、パーソナルユースクラスの割と少額な機器の購入とする予定である。
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