研究課題
植物バイオマスの効率的な変換には難分解性の細胞壁を,微生物に利用されやすい形に変換する必要がある.これまで,細胞壁を効率的に分解可能な酵素の遺伝子資源として主に白色腐朽菌が注目されてきた.本研究課題では,植物の細胞壁の分解酵素の新たな遺伝子資源として,寄生植物に着目した.寄生植物は,宿主植物の細胞壁を分解し,吸器とよばれる特殊な器官を宿主に侵入させることによって自身の維管束を宿主のものに接続することから,効率のよい細胞壁分解系を有すると考えた.国内で入手および栽培が可能な帰化植物であるヤセウツボ(Orobanche minor)を実験材料として用いた.ヤセウツボの RNAseq 解析で得られた配列情報より,細胞壁多糖の分解に関わると想定されるβ-グルコシダーゼ様の遺伝子配列をもつコンティグを抽出した.情報によりこの遺伝子の全長を取得し,その配列を解析したところ,得られた遺伝子はトマトの発芽時に細胞壁多糖の分解に関わることが予想されているβ-マンノシダーゼと高い配列相同性を有する酵素遺伝子であることが明らかとなった.そこで,この遺伝子を大腸菌で発現させたところ,β-マンノシド結合に高い特異性を有する糖質加水分解酵素であることが明らかとなった.さらに,ヤセウツボの種子より調製した細胞壁多糖を基質として用いたところ,反応産物としてマンノースが産生された.本結果は,植物由来のβ-マンノシダーゼが細胞壁多糖を分解することを直接的に示した最初の事例である.今後、この酵素を植物バイオマス変換微生物に導入することで,細胞壁多糖の効率的な変換系の確立に貢献できると期待される.
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