本研究では、セルロース系バイオマスから、簡便かつ効率よく単糖類(グルコース等)を取り出すための革新的糖化プロセスの構築に向け、結晶性セルロースを非結晶化する新規溶剤の開発を通して、1バッチ・1ステップでセルロース系バイオマスからグルコースを得るための水ー疎水性イオン液体二相系プロセスの構築を目的として検討を行った。 カチオン/アニオン部位の異なる種々の市販および合成イオン液体を用いた検討の結果、既往のセルロース溶剤であるジメチルアセトアミド部位をイオン液体のカチオン部位に導入した新規疎水性イオン液体を見出した。これに塩化リチウムを添加した溶剤により結晶性セルロースを適当な時間加熱し、ここに酵素セルラーゼ水溶液を添加することで、セルロースの再生と酵素糖化が二相系界面で進行する反応系を実現した。さらに、セルラーゼを界面に能動的に濃縮するため、ペプチドと親和性を有する部位を導入した疎水性イオン液体を新たに合成した。これを二相系界面酵素糖化系に添加し、当該ペプチドを挿入した組換えセルラーゼを添加したところ、添加系において酵素糖化効率の向上が確認されたことから、当初期待した効果を達成した。 一方、実バイオマスを対象とするための予備検討として、種々のイオン液体による前処理が酵素糖化効率に与える影響について基礎検討を実施した。本検討で得られた基礎知見は、新たなセルロース系バイオマス分解プロセスの構築に資するものと期待している。
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