研究課題
6ナイロンと66ナイロンは、合成ポリアミド全体の約90%を占め、繊維・プラスチックとして広く利用されている。本課題では、ナイロン加水分解酵素(NylC)の生化学的研究を基盤とし、酵素反応でモノマー化が可能な「次世代生分解性プラスチック」の開発の基礎検討を行った。ナイロンの酵素分解においては、分解産物の連続的な離脱が進むニック数(崩壊のための閾値)を超えるまではポリマーは酵素反応に抵抗性を示す。実際、6-ナイロンや66-ナイロンの分解率は1-2%にとどまっていた。そこで反応温度を30℃から60℃に上昇させたところ、遊離アミノ基の量は約2倍に上昇した。また、一定間隔でポリマー分子間の水素結合を攪乱するモノマーを挿入した共重合体を作成し、その分解性を調べた。具体的には、66-ナイロンの界面重合反応時に炭素数が4のコハク酸ユニットを0.12-0.32 mol当量の範囲で導入されるように添加した。これらにNylCを作用させたところ、コハク酸モノマーの割合が増えるにしたがって分解率が向上した。一方、重合度を低くすれば崩壊のための閾値が低くなることが予想され、分解速度も向上すると期待できる。そこで、6-ナイロンに対してギ酸による化学的限定分解を行うことで分子量を低下させ、NylCによる分解率を算出した。未処理のものは1.3%の分解率にとどまるが、ギ酸処理の時間に従って分解率は上昇し、50時間処理サンプル(重合度30~40)では40%以上の分解率を示すことが確認された。NylCの反応終了後に直鎖状オリゴマーをエキソ型に切断する酵素NylBを添加し、ナイロン分解を行った。その結果、分解率は飛躍的に向上し、ギ酸処理を50時間行ったものでは84%の分解率を示した。ギ酸処理を150時間行ったものについては97%というほぼ完全分解を達成することができた。
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