研究課題
本研究は、レーザービームを推進剤に照射しそのアブレーションを利用して推力を得るレーザーアブレーション推進において、通常発生するレーザービーム源から遠ざかる向きとは逆に、レーザービーム源に近づく向きへの推力発生が可能であることを、精密な推力測定および光学可視化実験によって実証することを目的として行った。ねじり振子式の精密なインパスルスタンドを作成し、推進力積の測定精度を確保し、大気中および真空中にてトラクタービーム推力が発生することを実証した。当初意図していた大気圧下の負圧発生を利用した方法は、その発生条件が極めて限定されることが確認されたため、透過率の異なる2層の材質を重ねたアブレーションによる方法に焦点を絞った。推進エネルギー源として、TEA(Transversely-Excited Atmospheric)炭酸ガスレーザーパルス(波長10.6μm、尖頭半値幅100ns、最大10J/pulse)を用い、透過材料としてポリエチレン、ポリアセタール等を、吸収材料としては油性黒マジックインクが効果的であった。最大20J/cm^2までのフルーエンスに対して力積およびアブレーション質量を測定し、トラクタービーム推進力積が雰囲気圧力にも影響を受けることが示された。本研究成果は、大気中のみならず宇宙空間のような真空下においてもレーザーアブレーションによって任意の向きに推進力積を発生できる可能性を実証するものであり、今後宇宙塵減速除去、人工衛星の遠隔軌道修正など、様々な応用に道を開くものである。
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