研究課題/領域番号 |
23656540
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 直嗣 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (40380711)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | イオンエンジン / 寿命評価 / キャビティリングダウン法 / 電気推進 / 光学測定 |
研究概要 |
「はやぶさ」の成功でその有益性が実証されたイオンエンジンではあるが、普及に向けた最大の課題として耐久性の向上が挙げられる。耐久性の向上に必要不可欠な寿命の評価方法を,従来の評価方法に代わり、「リアルタイム」で、「定量的」にイオンエンジンの耐久性が評価できるシステムの開発を行った.予算の執行の遅れから,予定していたレーザーの購入が遅れたために,次年度行う予定であった数値解析による寿命評価を行うとともに,代替法である多層膜コーティング法を用いた寿命評価方法を行った. 数値解析に関しては,フラックスチューブ法を用いた寿命評価コードのグリッドメッシュおよびタイムステップの感度解析を行い,パラメータの与える影響を調査するとともに,最適なメッシュサイズおよびタイムステップが明らかになった.また,現在開発している小型イオンエンジンの寿命が38000時間であることがわかり,これのスパッタされた電極の損耗量を算出し,キャビティリングダウン法に求められる検出量がわかった. さらに,多層膜コーティング法による寿命評価を行った.多層膜コーティング法は目標とする材料の薄膜を別のマーカーとなる金属薄膜で挟み,マーカーの検出がなくなってから次のマーカーの信号が出てくるまでの時間によって,損耗量を算出する方法で,電極にアルミとマーカーである銅の多層膜をコーティングして実験を行った.しかしながら,電極の損耗は一様でないことから膜と膜の境目を検出することができなかった.これから,電極寿命の算出には損耗量の空間分布の計測が不可欠であることが明らかになった.これと並行して,キャビティリングダウン法で用いるキャビティの製作および検出用プログラムを作成し,動作確認を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算の執行の遅れ,それに伴い実験装置の発注が遅れ,当初予定していたキャビティリングダウン分光法を行うには十分な実験期間がとれなかったが,その代わりに次年度に予定していた数値解析による評価,および多層膜コーティング法による評価が行えたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策に関しては,今年度実施できなかったキャビティリングダウン分光法を早急に実施する.また,一刻も早く成果を上げるために,プリズムによるマルチビームではなく,従来の光学系を用いて,対象物を移動させることにより空間分布を測定する方式に変更して,寿命評価を行う方式に変更する.また測定で最も重要なリングダウンタイムの測定に高性能のオシロスコープを購入し,精度向上を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度からの繰越額が発生したがこれは,交付額の確定が遅くなり,予算打ち切りの可能性を鑑みて,本研究基金で購入予定の部品を別予算で購入したこと,さらに,レーザーの納品が1月中旬になってしまった結果,購入予定であった光学部品が年度内に間に合わないことが明らかになり,購入を次年度に見送ったことが,理由としてあげられる.翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画としては,今回繰り越した金額で,感度向上に必要不可欠な高性能のデジタルフォスファーオシロスコープの購入費として100万円,さらに光学部品,イオンエンジン部品作成費,キセノンガスなどの消耗品に使用予定である.また研究成果の発表を行うための旅費としても使用する予定である.
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