研究課題/領域番号 |
23656543
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
田原 弘一 大阪工業大学, 工学部, 教授 (20207210)
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研究分担者 |
上辻 靖智 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (00340604)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマジェット / 超音速流 / 熱力学的非平衡 / 材料加工 / 表面処理 / 低温処理 |
研究概要 |
当初の計画通りに研究は進んだ。1、コンバージェント・ダイバージェントノズルを備えた材料加工用直流アークジェット装置を設計・製作した。ノズルは脱着可能であり、その形状を自由に変更できるように設計した。(田原、上辻担当)2、作動ガスにアンモニア NH3、窒素/水素混合ガス N2+nH2(水素モル比nは可変、n=3はアンモニア模擬ガス相当)、窒素、メタン、二酸化炭素を用いて、放電電流(放電電流50~300A)と作動ガス流量をパラメータとして変化させ、放電電圧、放電室・ノズル内各部の圧力を測定し、プラズマジェット装置の安定作動域を見出した。(田原担当)3、プラズマジェット装置のダイバージェントノズル部と排出プラズマ流の状態をプラズマ発光分光法により調べた。各種粒子の線スペクトル強度比(相対強度法)より、電子励起特性温度と分子・分子イオンの振動励起特性温度を求め、回転バンドスペクトルより回転励起特性温度を推定した。また、水素バルマー系列Hβ線のシュタルク広がりより電子密度を求めた。さらに、推力(反動力)測定により平均流速を見積もった。(田原担当)4、プラズマジェット装置の排出流の状態を各種の探針(静電探針、磁気探針)を用いて調べた。電子温度、プラズマ密度、空間電位、磁場の空間分布が得られた。5、以上の3、4のプラズマ流診断結果から、極度の熱力学非平衡状態のプラズマ流の生成が確認できた。(田原担当)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料加工用、材料表面処理・改質用に用いられている熱プラズマの短所、すなわち超高温環境が必要なので、1)電気入力が大きい、2)基材の温度が高い、3)材料の微視的プロセスが熱平衡であることを、根本的に解消することを目指して研究を進めた。 これまでの宇宙航行用直流アークジェット推進機の研究結果を、推進機としては悪い結果を、逆に大いに利用することを試みた。すなわち、極度の熱力学的非平衡な超音速プラズマ流を用いて、その高い化学反応性により材料加工、特に材料の温度を上げずに表面処理することを目指している。 各種作動ガスを用いた、プラズマ流の安定作動に成功し、さらにプラズマ流の状態を各種診断法により調べることにより、その状態を把握し、極度の熱力学的非平衡状態にあることを確認した。 今後の低温材料加工に必要なプラズマ流の状態が形成され、十分に把握されたので、本研究は順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方策は、当初計画通りである。 材料加工用、材料表面処理・改質用に用いられている熱プラズマの短所、すなわち超高温環境が必要なので、1)電気入力が大きい、2)基材の温度が高い、3)材料の微視的プロセスが熱平衡であることを、根本的に解消することを目指す。 これまでの宇宙航行用直流アークジェット推進機の研究結果を、推進機としては悪い結果を、逆に大いに利用することを試みる。すなわち、極度の熱力学的非平衡な超音速プラズマ流を用いて、その高い化学反応性により材料加工、特に材料の温度を上げずに表面処理することを目指す。超音速プラズマジェットを各種材料に照射し、被材料試料の温度を上げることなく、窒化処理による硬度上昇が可能かどうか明らかにする。次に、超音速プラズマジェットを溶射に応用し、生成される皮膜特性を調べる。基材の温度を上げることなく、溶射が可能かどうか明らかにする。これらの研究を通して、非平衡プラズマ流と材料表面との微視的な干渉現象を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下の通りの研究計画とそれに必要な研究費を予定している。1)超音速プラズマジェットを基材(チタン、鉄、アルミニウム、窒化鋼など)に直接照射し、その表面の改質を行う。基材には直流バイアス電圧を印加し、基材の温度を基材の複数個所で計測する。ノズル形状、プラズマジェット装置作動条件、基材バイアス電圧を変更し、照射後の表面特性を調べる。硬度の径方向・深さ方向分布を測定し、X線散乱(XRD)分析を行う。研究費として、作動ガス費用、基材費用、プラズマジェット電極・絶縁材費用が必要である。(田原、上辻担当)2)数値流体力学的な巨視的計算と基材表面の原子挙動の微視的計算により、基材とプラズマとの干渉状態を調べ検討する。研究費は必要ない。(田原、上辻担当)3)超音速反応性プラズマ流の特性、基材の表面物性の変化を検討し、本方法の、基材の温度を上げない表面改質法(表面硬化法(主に窒化処理))として可能性、今後の改良すべき点を検討する。研究費は必要ない。(田原、上辻担当)
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