平成23年度は数値計算を中心に研究を進め、提案した方法が優れた基本性能をもつことを確認した。平成24年度は、浮力制御タンク内のプランクトン等海洋微小生物の交換が実際の海域でも効果的に行われることを確認するため、実船の二重底タンクを模擬したタンク構造を搭載した大型模型船を製作して、洋上での模型実験により海水の交換性能を調べた。実験から下記の結果を得た。 1) 実験タンク内の2 点で塩分濃度計測を行い浮力制御タンク内の海水同化が着実に進行することを確認した。また、塩分濃度計の出力値が海水交換の進行を示す海水同化率の数値計算値とよく一致することが分かった。塩分濃度は提案するシステムにおける海水同化の進行を評価するための指標として有効である。 2) 実験タンク内の大型植物プランクトン数の変化からもタンク内の海水同化の進行を観察することができた。ただし、プランクトンの分布は実験海域で均一でないこと、また群体を形成するプランクトンの計数値が不安定なことなどから、海水同化率の定量的な評価にプランクトン計測値を用いるには計測法およびデータ解析手法に更なる工夫が必要と考えられる。 以上の結果は、今後さらに研究を推進するための貴重な知見であり、挑戦的萌芽研究としての本研究の位置づけから十分な成果と考えられる。 現在、本研究の成果を研究論文として国内外に発表するための作業を実施しており、開発した技術の認知、実用化を図っていきたい。また、本研究により判明したプランクトンの定量的計測の困難さについては、新たな研究項目として次年度以降も引き続き検討を進める所存である。
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