研究課題
最終年度の研究成果は以下の通りである。前年度までに,硫化水素イオンあるいは硫化物イオン(以降まとめて硫化水素イオン等)を含有する水を用いた水素生成実験を広範な条件で実施し,水素生成機構に関する仮説を立てた。そこで最終年度では,本仮説を検証し,水素生成機構を解明した。すなわち,pH9~13および 280℃~320℃(飽和蒸気圧)の条件下において,硫化水素イオン等と水が反応し,多硫化物イオンあるいは硫黄のオキソ酸イオン(以降まとめて多硫化物イオン等)と水素が生成する。水素の生成量に関しては、温度およびpHの増加にともなう硫黄の酸化の進行で増加するが,温度の増加では反応速度の増加も生じるため、特に温度依存性が大きい。また,水素生成で生じる多硫化物イオン等と還元性有機物であるグルコースを60℃以上(飽和蒸気圧条件下)で反応させると,硫化水素イオン等を再生でき,再生量は約100℃で最大である。研究期間全体の研究成果は以下の通りである。すなわち,比較的低温で進行する硫黄の酸化還元サイクルを通じたバイオマスからの水素製造方法を新たに提案した。本水素製造方法は,硫化水素イオン等で亜臨界水を還元し水素を製造する一つ目のハーフサイクルと,水素生成にともない生じる多硫化物イオン等をバイオマス由来の有機物で還元して硫化水素イオン等を再生する二つ目のハーフサイクルからなり,石油精製で生じる余剰硫黄,工場排熱そして地熱の利用が期待できる。水素生成実験を通じて,pH9~13および280℃~320℃(飽和蒸気圧下)の条件下における水素生成を実証,反応機構を明らかにし,グルコースを用いれば60℃以上(飽和蒸気圧条件下)で硫化水素イオン等を再生可能であることも実証した。さらに本水素製造方法を用いると,触媒を用いた500℃での水熱ガス化よりも,より多くの水素をグルコースから製造できる可能性を見出した。
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International Journal of Hydrogen Energy
巻: 37(24) ページ: 18679-18687
DOI:10.1016/j.ijhydene.2012.10.013