研究概要 |
本研究では,三次元構造をなす先在き裂の相互干渉に基づく岩石の破壊挙動解析コードを開発し,様々な応力条件における破壊解析を通じて強度破壊と強度破壊後の変形・破壊挙動のメカニズムを明らかにすることを目指しているが,研究期間の制約もあるため,一軸引張応力条件における破壊解析と粒界の粘弾性挙動に基づく応力解放時の岩石の損傷評価を行った. 1.コンピュータ上に作成した単一鉱物多結晶岩石試料について,粒界の引張-せん断軟化則と拡張Coulomb基準に塑性理論における関連流れ則を適用して粒界の構成則を求め,粒界き裂をジョイント要素で表現した有限要素モデルに基づき,粒界のみが破壊すると仮定して一軸引張応力条件における破壊過程解析を行った.その結果,法線方向が荷重軸方向に近い粒界からランダムな位置で引張破壊が開始し,ピーク強度に達する前には引張破壊した粒界のうちで最終破面を構成しない粒界の除荷が生じ,ピーク強度点では法線方向が荷重軸から大きく傾斜している粒界が未破壊で残り,さらに,破面の最終形成段階では,法線方向が荷重軸方向となす角度が大きい粒界で引張破壊からせん断破壊へのモード転換が生ずることなどを明らかにした. 2.粒界の粘弾性挙動に基づく応力解放時の岩石の新しい損傷メカニズムを提案し,一般的圧縮応力場にある単一鉱物多結晶岩石の応力が解放された場合に生ずる損傷度やクラック密度を拡張Coulomb基準に基づいて解析した.その結果,岩石の損傷は主応力の最大値方向に法線方向を有する粒界を中心に生じ,その他の主応力方向に法線方向を有する粒界の損傷は極めて小さいことからDSCAの基本仮定は成立しないこと,しかし,それにもかかわらず,DSCAによって主応力比がある程度正確に評価できる応力領域が存在し,地下深部になるほどこの応力領域が広くなることなどを明らかにした.
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