研究課題/領域番号 |
23656558
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
土屋 範芳 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40207410)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 海底熱水鉱床 / アクティブ・マイニング / 水素製造 / 硫化物鉱床 / レアメタル |
研究概要 |
海洋底は,大陸地殻と比較してはるかに形成年代が若く,また熱水噴出口は基本的に拡大軸に分布しているため,初期熱水性鉱床は海洋底の中でも最も若い年代の地域に多く分布すると推定される.この結果,露出鉱床であろうと,潜頭鉱床であろうと,陸上で開発される鉱床に比べて海底面からの開発深度は浅いと考えられ,このような海洋底熱水鉱床の特質を利用し,アクティブ・マイニング技術の開発を提唱する.すなわち,現在既に存在する鉱床をただ単に探鉱して開発する受動的な鉱山開発(パッシブ・マイニング)から,今まさに鉱床が生成しているような比較的若い時代に形成した海洋底鉱床を対象にして,開発しやすく,かつ処理しやすい鉱石を沈殿させる能動的な鉱山開発(アクティブ・マイニング)の概念の可能性を検討する.この技術の創出により,レアメタルを含む資源の安定供給技術の開発に展開する. 特にこの研究では,水熱反応を用いて,水と金属の反応および水と硫黄との反応から水素を製造し,これにより,硫化物の形成環境を改変させて,化学的に利用しやすい鉱石の沈殿を促すことを実験的に検討する.現在の主要な鉄鋼精錬は、酸化物(赤鉄鉱)をコークスで還元させ,その反応温度はおおむね1000℃を超える.ここで研究するのは鉱石として硫化物を用い,これを水素で還元させて金属を得て,副産物として硫化水素を得る反応を想定している.硫化水素は水熱反応で水素とイオウに分解することができ,このとき発生する水素を硫化鉱物の還元に再び利用することになる.このような反応ループを構成できれば,アクティブ・マイニングへの一つの布石となるであろう.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルミニウムと水との反応,ニッケルと水との反応についての基本的知見は得られ,海底熱水噴出孔でのアクティブ・マイニングや水素の発生メカニズムについての実験データを得ることができているため.
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今後の研究の推進方策 |
金属と水,硫黄と水の水熱反応による水素製造反応についてはある程度の目処が立ったので,本年度はこれらの水熱反応プロセスの平衡論的解析,速度論的解析を進めるともに,海洋底熱水噴出孔での鉱物共生の実態の情報を得て,パッシブ・マイニングからアクティブ・マイニングへの転換要素を具体的に挙げられるようにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
主として,水熱反応用いるオートクレーブの購入とその実験に用いる薬品類,および学会発表などの旅費,さらに論文投稿のための英文校閲などの費用に支弁する. 23年度未使用額の発生は,東日本大震災の影響により,分析装置(ガスクロマトグラフ)が壊れ,その修理に時間がかかっているためである.修理は終了しているので,その分の実験を24年度に実施し,ガスクロマトグラフ分析に必要な消耗品(カラム類)を購入する.
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