強制分極法(IP法)は、大地に電流を流して人工的な分極状態を作り、地下の分極現象を観測することによって金属鉱床などを探査する電気探査法の一種である。IP法には、2つの異なる周波数の電流を用いる周波数領域IP法と、電流遮断後の過渡応答を用いる時間領域IP法がある。従来の時間領域IP法では、観測電位の過渡応答を時間積分した値だけを見掛充電率として利用している。しかし、IP効果を決定するパラメータには充電率の他に時定数や周波数依存係数などがあり、同じ見掛充電率でも時定数や周波数依存係数が異なれば、過渡応答の形状は大きく異なることが知られている。本研究では、これまで使われていなかった時定数や周波数依存係数を利用して鉱種の識別を行なうため、解析プログラムの開発と測定システムの基礎研究を実施した。 時間領域IP法を用いて地下の探査を行なうためには、任意の地下構造での観測値がシミュレートできるプログラムが必要である。そこで、構造が2次元で電流源が3次元である所謂2.5次元のフォワードプログラムを開発した。このプログラムにはGUIを用いたデータの入出力機能や計算結果の可視化機能があるため、時間領域IP法による地下構造のシミュレーションが以前に比べて格段に容易になった。また、計測システムの基礎研究として、既存の計測モジュールを用いた時間領域IP法の計測システムを試作し、異なる材質のIP効果を計測する室内実験を実施した。
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