研究課題/領域番号 |
23656565
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大場 武 東海大学, 理学部, 教授 (60203915)
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キーワード | レーザー / ラマン光 / 火口湖 / 火山活動 |
研究概要 |
活火山の火口に形成される火口湖は活動的火口湖と呼ばれ,その特徴的な色彩から,阿蘇山,草津白根山などでは観光資源となっている.しかし,活動的火口湖では前兆的な地震活動を伴わずに水蒸気爆発が発生し人的被害が発生する危険性がある.水蒸気爆発は熱水溜りの爆発でありマグマの移動を伴わずに発生するので,かならずしも前兆的な地震活動を伴わないと考えられている.一方で,爆発の駆動力である熱水溜りに存在する流体の一部は火口湖水に流入するので,爆発時に熱水の化学組成が変化するなら,火口湖水の化学組成をモニタリングすることにより,水蒸気爆発の予知につながる可能性が開かれる.火口湖水の化学的な情報を得るには,火口湖水を採取して化学分析することが最も信頼性の高い方法であるが,火口湖は接近が困難な場合が多く採取に危険を伴い,特に噴火が切迫した場合に直接採取は断念せざろう得ないだろう.つまり直接的な採取にたよる方法では,化学的観測による噴火予知に本質的な限界が伴う. 本研究では,火口湖に遠隔地点からレーザー光を照射し,後方散乱するラマン光を観測することにより,火口湖水の化学的な情報を取得し,火山噴火予知の可能性を化学的な手法で拡大することを目的としている.平成24年度は,前年度に組み立てた装置を用い液体のラマン光観測を行った.励起光には,532nm,0.6Wの連続発振レーザーを用い,試験管にいれた純水,3N,6NのHCl溶液にレーザー光を至近距離から照射し60cm程度はなれた場所から屈折望遠鏡を使い,液体表面の像を分光器のスリットに結像させた.分光された光の検出にはフォトマルチプライヤーを用いた.得られたラマン光ピークは二つのピークが重なっており,デコンボリュートされた水素結合に関連するピークは,酸性度に応じ,高さが直線的に減少することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パルス式レーザーの購入ができなかったが,既存の連続発振レーザーと光学チョッパーを組み合わせ,当初予定していた装置の機能を実現することに成功した.購入した装置を組み合わせ,水溶液のラマン光の観測に成功し,酸性度とピーク強度の関係を確認することに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
基本的な装置の機能は確保されたので,実際に遠隔的に水溶液の化学的情報を取得できるか実験を重ね,分光器の改良を行い,可能であれば野外観測を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
【繰り越し金が発生した理由】 平成24年度は室内実験に集中し,野外観測の実施を見合わせたために,旅費等に余剰が発生した. 【繰り越し金を合わせた使用計画】 分光器の感度を大幅に向上させるために,2次元CCDを用いたマルチチャンネル分光器を作成する.その他として実験に用いる消耗品の購入に充てる.
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