活動的火口湖における噴火は水蒸気爆発が特徴的で,前兆地震活動を伴わずに噴火が発生し人的被害が発生する危険性がある.水蒸気爆発は熱水溜りの爆発でありマグマの移動を伴わずに発生するので,かならずしも前兆的な地震活動を伴わないと考えられている.一方で,爆発の駆動力である熱水溜りに存在する流体の一部は火口湖水に流入するので,火口湖水の化学組成をモニタリングすることにより,水蒸気爆発の予知につながる可能性がある.火口湖水の化学的な情報を得るには,火口湖水を採取して化学分析することが最も信頼性の高い方法であるが,特に噴火が切迫した場合に直接採取は困難である.一般に火口湖は深いクレーターの底に形成される場合が多く,急峻な崖をおりて試料の採取をするのは危険である.つまり直接的な採取にたよる方法では,化学的観測による噴火予知に本質的な限界が伴う.本研究では,火口湖に遠隔地点からレーザー光を照射し,後方散乱するラマン光を観測することにより,火口湖水の化学的な情報を取得し,火山噴火予知の可能性を化学的な手法で拡大することを目的としている.平成25年度は,前年度までに組み立てた装置を用い液体のラマン光観測を引き続き行った.励起光には,532nm,0.6Wの連続発振レーザーを用い,試験管にいれた純水,3N,6NのHCl溶液にレーザー光を15cmの距離から照射し60cm程度はなれた場所から対物レンズで液体表面の像を分光器のスリットに結像させた.分光された光の検出にはフォトマルチプライヤーを用いた.検出感度を向上させるために,レーザー光はチョッパーでパルス化し,ロックインアンプを経由してラマン光を検出した.得られたラマン光ピークは二つのピークが重なっており,デコンボリュートされた水素結合に関連するピークは,酸性度に応じ高さが直線的に減少することを確認した.
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