研究課題/領域番号 |
23656566
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
粕谷 亮 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 研究員 (50509734)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 白金族金属 / アルカリ金属 / 複合酸化物 / リサイクル / 酸 / 溶解 |
研究概要 |
従来の白金族金属の回収技術の多くは、酸溶液を用いて白金族金属を溶解する工程が含まれている。しかし、白金族金属は水素よりもイオン化傾向が小さいため、白金族金属が金属状態では、水素イオン濃度が高いというだけの単純な酸溶液にはほとんど溶解しない。酸化力の強い王水を用いることで白金族金属を溶解できるが、この方法では溶解工程における有害ガスの発生や、王水に含まれる硝酸の除去工程が必要といった問題があった。本研究では、酸に容易に溶解可能な白金族金属の複合酸化物を用いることで、王水の使用を回避しつつ、より安全、かつ迅速に白金族金属を回収できる新規な再資源化プロセスの確立を目的としている。 平成23年度は、Ptとアルカリ金属からなる複合酸化物を作製し、得られた試料を酸へ溶解することでPtの溶解率を算出した。アルカリ金属源の種類や加熱温度などを変更して複合酸化物の作製を試みた結果、炭酸LiとPt黒を600℃以上で加熱することでLi,Pt含有複合酸化物であるLi2PtO3を得ることに成功した。これに対して、アルカリ金属をNaとした場合では800℃の加熱によりNa,Pt含有複合酸化物であるNa2PtO3を形成できたが、未反応のPtとNa源に用いたNa2CO3も残存していた。 次に加熱試料を60℃の塩酸中で9時間保持し、残渣の重量と組成からPtの溶解率を求めた。この結果、Li2PtO3とNa,Pt含有試料ともにPtの溶解率は約80%と非常に高い値を示した。一方、金属単体であるPt黒の塩酸に対する溶解率は29.8%であり、複合酸化物の溶解率と比較して大幅に低い値だった。以上のことから、複合酸化物を経由することで酸化力のない塩酸に対してPtを容易に溶解できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ptについては、複合酸化物を経由することで塩酸に対する溶解率を大幅に増大できた。アルカリ金属源として資源量の豊富なNaを用いた場合でもPtを含む複合酸化物が形成され、酸に容易に溶解できた。このことは、Liの資源リスクを回避する上で重要な結果である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、RhやPdなどの白金族金属について、複合酸化物の作製と溶解試験を進めている。酸溶解後の溶液試料については元素分析を行い、金属濃度を算出する。また、酸に対する複合酸化物の溶解機構についても検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
Pt、RhおよびPdなどの白金族金属を含む複合酸化物の作製に必要な試薬類、および溶解試験に用いる酸類を昨年度に引き続き購入する。また、溶解試験や溶解後の濾過操作で用いるフラスコやメンブレンフィルタ等の器具類を必要に応じて新たに購入する。
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