研究概要 |
本研究では,ひまし油を加水分解して得られるリシノレイン酸を用いてポリウレタン材料の原料のポリオールにエステル結合を導入し,分子構造内に分解性のエステル結合を導入した新規ポリオール(PTHF-RA-OH)を合成した。そのポリオールから分子構造内に周期的にエステル結合を有する新規ポリウレタン(PTHF-RA-BD-PU)を合成した。得られたPTHF-RA-BD-PU はポリテトラメチレングリコール(PTHF-OH)から合成されるPTHF-BD-PUと類似の熱的性質と力学的性質を示した。PTHF-RA-BD-PUをTHF/エタノール混合溶媒中,水の存在下で水酸化カリウムを作用させると,ポリウレタン分子中のエステル結合が加水分解してPTHF-OHとリシノレイン酸単位を含むウレタンオリゴマーが生成し,この混合物から塩化メチレンで抽出することによりPTHF-RA-BD-PUのポリ(テトラヒドロフラン)セグメントの原料となるPTHF-OHが90%以上の高収率で再生した。さらに,PTHF-RA-BD-PU酵素分解反応を,エステル加水分解酵素であるリパーゼを用いて行った。PTHF-RA-BD-PUの分子量は,緩衝溶液(りん酸緩衝溶液 pH 7.4)中の水系不均一反応とDMF溶媒中の有機溶媒系均一反応において減少した。これは,PTHF-RA-BD-PU の分子構造内のリシノレイン酸エステル部分がリパーゼの作用により加水分解したためと考えられる。
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