研究課題/領域番号 |
23656569
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安田 啓司 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80293645)
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研究分担者 |
香田 忍 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10126857)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 超音波 / レアメタル / 溶媒抽出 / エマルション / 分散 / 凝集 |
研究概要 |
23年度はナノエマルションの形成条件の明確化とエマルションの凝集条件の明確化を行った。超音波装置は主に2種類で、20 kHzの低周波照射にはホーン型を、500 kHz以上の高周波照射には平板型の振動子を使用した。エマルション化では蒸留水20 mLにクロロホルムを0.4 mL添加し、超音波を直接的に照射した。凝集プロセスでは試料として、20 kHz超音波を40 Wで30秒間照射して作製したエマルションを用いた。試料はガラス製小瓶に入れ、間接的な超音波照射を行った。 ナノエマルションの形成では、20 kHzの単独照射の場合、平均液滴径は23.3μmであったが、20 kHzと500 kHzの逐次照射をすることによって、0.47μmに減少した。これは、20 kHzの超音波キャビテーションに加えて、500 kHzの振動加速度の増大により、ナノエマルションが形成したと考えられる。 エマルションの凝集では、始めに直接照射で油滴の凝集を試みたが、凝集効果は得られなかった。そこで、間接照射にすることで、音響流の影響を弱めたところ、凝集効果が得られた。またガラス製小瓶を斜めに水浴させたことで、凝集した油滴を一箇所に集め、油滴の再分散を防いだ。1.0、1.6、2.4、3.3、4.0、4.8 MHzの超音波を間接照射したところ、周波数が高くなるに従って、凝集時間が短くなった。また、振動子印加電力が高くなるほど、凝集時間が短縮した。これらの説明をするために超音波が形成する定在波中での粒子が受ける力を考える。この力には腹または節に向かう力と粒子同士で引き合う力の2種類があり、どちらも周波数とエネルギー密度に正の相関性がある。このことから、周波数と印加電力が大きくなると油滴を凝集させる力が強くなり、凝集に要する時間が短くなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した平成23年度の目標は「初年度は超音波によるナノエマルションの形成条件を明白にし、さらに、形成したナノエマルションを凝集させる条件を明らかにする。それらの知見をもとに装置を開発する。」ことである。 本研究から、ナノエマルションの形成には、低周波数から高周波数への逐次照射が有効であることを明らかにした。 また、エマルションの凝集には、間接照射にして、容器を傾けることが有効であることを明白にした。さらに、凝集時間の短縮には、超音波周波数が高く、振動子印加電力が大きいことが有効であることを明らかにした。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
エマルション凝集条件の更なる最適化、有機溶媒の選択と水溶液中のレアメタルの回収性能を検討し、本方法の適応条件・能力を明らかにする。そのために、以下の点について研究する。(1)「凝集における間接照射条件の最適化」間接照射の容器の寸法、位置、傾きの最適化を行う。(2)「有機溶媒種類、量の影響」凝集時間を短縮するために、水と密度、音速が大幅に異なる有機溶媒種の選択、水体積:有機溶媒体積の最適化を行う。(3)「レアメタルの回収と攪拌操作との比較」pHを変えた場合のガリウムの溶媒抽出に対して、超音波による抽出率と従来の攪拌・重力沈降を行った場合の抽出率との比較、操作時間の比較をする。(4)「レアメタル濃度、共存物質の影響」ガリウム濃度を変化させた場合と、鉄、銅などの共存物質が抽出率・選択率に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、超音波によるナノエマルションを利用したレアメタル回収の新技術への挑戦に関する研究であり、レアメタルの濃度測定を行うために、現有の原子吸光光度計を使用するが、ガリウムなどを測定するためには、消耗品のホロカソードランプを必要とする。また、超音波によるレアメタル回収実験と音場解析には消耗品として、振動子、薬品、ガラス容器、音圧プローブが欠かせない。 旅費については、レアメタルの分析に詳しい信州大学などを訪問する予定である。本申請研究で得られた成果については、適宜、学会研究会(化学工学会、廃棄物学会など)で発表することが、研究の方向性の確認、研究計画の微調整を行う上で必要不可欠であり、そのための出張費・学会参加費が必要である。 さらに重要かつ査読有意義な成果、知見については最終的に、国際会議、学術雑誌に投稿・発表するため、そのための費用も必要である。
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