1.植物油に適した触媒の研究開発 さらなる廃棄プラスチックの不飽和ポリエステル(UP樹脂)の分解性の向上(分解速度の上昇、或いは加熱温度の低減)を図るため、まず菜種油に適合する触媒とその添加方法を研究開発した。触媒として水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)など合計6種類のアルカリ金属塩を重量比で0.38%添加した植物油中で、UP樹脂の加熱実験を行った。UP樹脂の分解性が最も向上する触媒は、KOHであった。UPの分解速度は、触媒なしで1.6wt%/minであったのに対し、KOHの添加により2.2wt%/minに向上した。菜種油への最適な触媒の添加量を確認した。触媒添加量の増加に伴い分解速度は、著しく上昇した。KOH1.0wt%の添加により、UP樹脂の分解速度は、3.6wt%/minまで向上した。なお、触媒は不純物として、UP樹脂の分解油中に残存するので、できる限り少量の添加が望ましい。 2. 廃棄プラスチック分解物のリサイクル技術の研究開発 (1) 化学分析によりUP分解油の組成を確認した。プラスチック分解性に優れる触媒を用いてUP樹脂を熱分解した油化物のFTIR分析を行った。分析データから触媒の有無におけるUP分解物の化学組成の大きな差異を確認できなかった。 (2) 分析結果を基にUP分解物のリサイクル技術を考案し、実験を行った。UP分解油からディーゼル燃料油(メチルエステル化)の製造を行った。なお、今後、この燃料油を用いたディーゼル内燃機関の稼働実験を行う予定にある。UP樹脂の分解反応中の揮発物質を冷却して、フタルの化学原料を分離回収する実験を行った。UP分解速度の上昇に伴い、フタル酸の回収速度も上昇した。
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