研究課題/領域番号 |
23656573
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大野 哲靖 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60203890)
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研究分担者 |
松波 紀明 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (70109304)
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キーワード | 核融合 / ダイバータ / プラズマ壁相互作用 / 炭素材 / イオンビーム解析 / その場計測 / 動的吸蔵量 / 水素同位体置換 |
研究概要 |
高熱流プラズマ照射とイオンビーム分析のその場計測を可能にした装置Plasma Surface Dynamics with Ion Beam Analysis (PS-DIBA)を用いて、炭素材料におけるプラズマ照射中重水素吸蔵量を定量的に評価した。 等方性黒鉛に対して重水素プラズマを照射し、プラズマ照射中、照射停止後の重水素吸蔵量を測定し、動的吸蔵量を計測した。動的吸蔵量は、静的吸蔵量と同様に、試料温度が増加するにつれて減少し、入射イオン粒子束が増加すると増加した。また、試料温度の増加に対する静的吸蔵量と動的吸蔵量の増加割合は同程度であることを確認した。さらに、TMAP7シミュレーションを用いた計算を行った結果、プラズマ照射中、照射停止後共に試料表面では拡散律速状態となっており、動的吸蔵量の放出時間は主にイオンの飛程付近から試料表面方向への勾配で決まることが分かった。そのため、プラズマ照射停止後は重水素の深さ分布が変化して表面方向への勾配が緩やかになることにより、プラズマ照射停止後の放出の特性時間はプラズマ照射中よりも大きくなることが分かった。 重水素吸蔵後の等方性黒鉛に対して軽水素プラズマを照射することにより、水素同位体置換効果を調べた。その結果、軽水素粒子束が大きいほど重水素吸蔵量はより大きく減少し、減少は指数的であることが確認された。そして、軽水素プラズマ照射後、重水素プラズマを再度照射すると、軽水素プラズマ照射前と比べて照射中の重水素吸蔵量が増加するという現象が観測された。動的吸蔵量のみが変化していることから、水素粒子束によって試料における重水素の拡散係数もしくは再結合係数が変化した可能性が考えられる。将来の核融合炉において、材料中のトリチウムを水素同位体プラズマを用いて除去する際にはより高粒子束でプラズマを照射することが効果的であると示唆される。
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