初期核融合炉用トリチウムの準備の方法を検討しておくことは、今後の核融合研究を進める上で重要である。高温ガス炉は、第4世代原子力システムの有力候補のひとつであり、安全性の高いシステムと位置づけられている。高温ガス炉の耐熱(低発熱密度)設計は、有効炉心体積を大きくする反面、燃料近辺に核変換対象物質を装荷できる物理的スペースを提供する。黒鉛・ヘリウムによる減速・冷却系は、核的に不要な中性子の吸収が少なく、化学的にLi化合物及びトリチウムとの相性がよい。本研究では、高温ガス炉を用いたトリチウム生産法を提示し、その性能を、まずは炉心物理の観点から数値解析によって評価することを目的とした。 我々は、Li化合物をカーネルとした被覆粒子を用い、可燃性毒物としてのB-10をLi-6に置き換えることによる、余剰の中性子を用いたトリチウム生産法を提案した。「高温ガス炉ガスタービン発電システム(GTHTR300)(熱出力600MW)」概念設計をベースとしたモンテカルロ燃焼計算により、BP装荷孔以外の炉心設計を変更せずに、180日間の運転で、300~700g程度のトリチウム生成が可能であることを示した。Li-6密度が小さい化合物を用いる場合に対しても、周辺領域へのLi装荷法や、ヘリウムガスを用いた連続回収法により、同程度のトリチウム生産が可能であることを示した。炉心物理の観点からの最適な運転シナリオについても検討した。 本研究は、下記の連携研究者の協力を得て実行した。 西川正史(九大特任教授、トリチウム工学からの検討)、島川聡司(JAEA大洗研究開発センター、炉心物理の観点からの評価)、後藤実(JAEA大洗研究開発センター、炉心物理・システム整合性の観点からの評価)、中川繁昭(JAEA大洗研究開発センター、工学安全性の評価)
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