研究課題
乱流場における偶然力の可視化と定量化という課題に対して行った研究は以下の通りである。まず、1)非誘導方式による電流駆動と閉磁気面形成過程、を磁気解析により調べ、2)高ポロイダルベータプラズマと自発ダイバーター配位形成が可能な外部条件を解明し、高速電子の寄与を評価すること、さらに本研究課題の主要なテーマである3)高周波印加によるSOLのコヒーレント揺らぎと磁力線ピッチの統計性を明らかにした。概要を述べる。まず開磁気面下で、シード電流と高速電子が放出するX線の磁気ミラー比M(0.85-2)依存性を調べ、ミラー比を強めることによりX線強度の増大を観測した。これが高速電子の閉じ込めによることは高周波遮断後の減衰時間によって確認した。こうして、磁気ミラー比を強め(M=2)、磁場強度を大きくすること(Bz/Bt~10%)によりサイクロトロン共鳴で初期生成された高速電子を良好に閉じ込め、高効率な電流立ち上げ(0.3-0.5MA/s)を実現し、到達値~35kAの非誘導電流駆動が可能であることを見い出す成果を挙げた。X線計測をもとに高速電子の圧力を推定し、圧力増大により自発ダイバーター配位が形成されることを確認した。こうした非誘導電流駆動プラズマにおいて、高温プラズマの境界域における間歇的大振幅揺らぎの発生機構とそれによる熱・粒子輸送の解明に向けて、磁力線のピッチの依存性を調べた。プローブにより密度、電位、流れ場の同時計測と詳細な広領域計測を行い、揺らぎの統計解析を行った。非接触イメージング手法を用いて、極めて広い領域をプラズマを乱すことなく高速度で観測することに成功し、密度の対流輸送をもとに密度揺らぎから速度場を再構築する手法を開発した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の目標は乱流場における偶然力の可視化と定量化に関する研究課題である為、研究計画は計測と解析手法を主体としたものであった。即ち、高速カメラを用いた2次元の揺らぎ計測とその統計解析から導かれる”偶然力”の可視化手法の確立と可動プローブを用いた局所揺らぎ計測とその統計解析に基づき定量化に取り組むという内容であった。しかしながら前述したように、この研究を実施するなかで、サイクロトロン波を用いた非誘導電流駆動による世界初の高ベータポロイダルプラズマの実現、さらに内側にヌル点を有する磁力線配位におけるSOL揺らぎの観測へと研究を発展させることに成功し、SOLでの揺らぎの研究をコアプラズマとの性能や対向壁への熱流束・粒子束との関係から論じることができるまで発展させることができた。これらの成果は、当初の計画を大きく上回るものであり、その内容は核融合の国際会議であるFEC、Nuclear Fusion 誌、プラズマ・核融合学会誌にそれぞれ発表した。また、最近の成果については、日本物理学会、プラズマ・核融合学会、アジアプラズマタスクフォースWS等で発表し、H25年度の6,7月のアジアプラズマ学会が主催する2つの国際学会でも発表する。到達度が当初の目標を大きく上回るものとして、昨年から取り組んでいる、プラズマのトロイダル回転計測である。これはイオンの発光線のDopplerシフト量をフィルターを介して観測する手法であり高速カメラと組合わせて2次元計測を目指して開発途上のものである。観測強度変化を速度変化に変換できる手法に関しては初期的データを得ることができその解析からトロイダル方向の回転を2次元的に観測することに成功した。この観測値は炭素のスペクトル線の波長シフトから評価するものとよい一致を示しており、こうした2種類の手法の導入により、速度に関する乱れ場と平均場の同時計測へと発展が見込まれる。
前述のように本研究を通じて博士課程の院生が1)非誘導電流駆動による高poloidalベータと高速電子寄与、2)高速カメラを用いた揺動と磁力線ピッチの関係に関する複数の論文を公表、さらにそれを発展させた内容の成果を学術誌に投稿中という成果に結びつけることができた。さらに一人の院生が本テーマをさらに発展させることを研究課題(磁化プラズマにおけるプラズモイド生成と磁力線を横切る輸送におよぼす磁力線曲率と乱流速度場の影響について)として申請した研究助成(笹川奨学金)が認められ、現在進めている揺動に関する研究結果を6,7月に実施される2つの国際会議に発表するに至っている。今後、高速カメラと可動プローブを用いたプラズマ周辺部での2次元揺動とトロイダル・ポロイダル流れの関係の解明、揺動と流れの制御によるダイバーターへの熱流束・粒子束の制御に向けて研究を展開する。具体的には新しいプローブにより局所的流れ場(ExB)の観測を行い、同一点を高速カメラで観測することで、密度揺動から再構築した流れ場との比較を行う。この比較を経て、6対の磁場コイルを組み合わすことにより、境界流域の磁力線のピッチと曲率を変え、背景勾配、揺らぎ振幅と成長率、揺らぎパターンのサイズ、背景揺らぎからblob発生、blob伝播速度とサイズなどの依存性を調べる。blobは高密度のプラズマ塊であり、磁力線を横切る非拡散的熱流束・粒子束としてプラズマ対向壁に拡散束から予測されるよりも平均として大きな熱負荷をもたらすものとして重要性が認識されている。こうした位置づけで研究を発展させ、基盤S ”多階層複雑・開放系における粒子循環の物理とマクロ制御”の研究の一翼を担いたい。
H25年度は最終年度であり、助成金の使途として申請した成果発表用のための30万の予算を 1)日本物理学会(徳島大学 2013年9月)での発表のための旅費、2)トリチウム関連の国際会議での発表並びに論文のための登録料、3)実験関係の消耗品購入などに使用する予定である。
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Journal of Nuclear Materials
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