研究課題/領域番号 |
23656581
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小崎 完 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60234746)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高レベル放射性廃棄物 / 地層処分 / ベントナイト / 拡散 / 鉄 / 腐食 / 見かけの拡散係数 / 活性化エネルギー |
研究概要 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、核種移行に対してバリア性能を有する緩衝材を用いることが考えられている。Na型ベントナイトは、陽イオンに対しては高い収着・遅延能を有することから緩衝材の有力な候補であるが、陰イオン性の放射性核種に対しては十分なバリア性能が期待できないとされる。しかし、炭素鋼製廃棄物容器の腐食に伴って緩衝材に放出されるFeイオンによりFe型化すると、陰イオンに対しても収着・遅延能を有する可能性がある。そこで、ここでは、Fe型ベントナイトの陰イオンに対する潜在的なバリア性能を明らかにすることを目的とした研究を実施した。研究初年度の平成23年度は、まず、Fe(III)型ベントナイト試料を、FeCl3溶液中でのイオン交換反応を利用してNa型ベントナイト試料から調製した。得られた試料を分析した結果、複数回のイオン交換処理とその後の希塩酸およびイオン交換水による段階的な過剰塩除去処理により、ベントナイトのイオン交換容量のほぼ全量をFe(III)イオンに置換できることが確認できた。次に、調製したFe(III)型ベントナイトを用いてClイオンの一次元非定常拡散実験を行った結果、乾燥密度1.2 Mg/m3及び1.6 Mg/m3におけるFe(III)型の見かけの拡散係数は、Na型中の値に比べて1/7-1/3となることが明らかになった。また、その温度依存性から求めた、拡散の活性化エネルギーは約11 kJ/molとなった。この値は、Na型ベントナイト中の値(22.0 kJ/mol)および自由水中の値(17.4 kJ/mol)よりも低いことから、ClイオンがFe(III)型ベントナイトの層間のFe(III)イオンと錯形成することで移行が遅延している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
福島第1原子力発電所の事故に関連した緊急の用務に多くの時間を費やしたため。
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今後の研究の推進方策 |
実験を担当する学生を増員することなどで、やや遅れ気味の達成度の回復を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
福島第1原子力発電所の事故に関連した緊急の用務に多くの時間を費やしたため実験が予定通り進捗せず、研究成果発表も控えたため、実験を担当する学生への謝金ならびに旅費に未使用額が発生した。これは、今年度中に発表できなかった研究成果を発表する際の旅費および学会の参加登録料等として使用する予定である。
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