研究課題/領域番号 |
23656581
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小崎 完 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60234746)
|
キーワード | 高レベル放射性廃棄物 / 地層処分 / ベントナイト / 拡散 / 鉄 / 腐食 / 見かけの拡散係数 / 活性化エネルギー |
研究概要 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、核種移行に対してバリア性能を有する緩衝材を用いることが考えられている。Na型ベントナイトは、陽イオンに対しては高い収着・遅延能を有することから緩衝材の有力な候補であるが、陰イオン性の放射性核種に対しては十分 なバリア性能が期待できないとされる。しかし、炭素鋼製廃棄物容器の腐食に伴って緩衝材に放出されるFeイオンによりFe型化すると、陰イオンに対しても収着・遅延能を有する可能性がある。そこで、ここでは、Fe型ベントナイトの陰イオンに対する潜在的なバリア性能を明らかにすることを目的とした研究を実施した。研究2年目となる平成24年度は、平成23年度に実施したFe(III)型ベントナイト試料中のCl-イオンの非定常拡散実験を継続し、新たに乾燥密度1.0Mg/m3における拡散の活性化エネルギーが22.5(±2.3) kJ/molであることを明らかにした。一方、今年度より新たに実施したFe(III)型ベントナイト試料中のCl-イオンの透過型拡散試験において、試験で得られた保持因子から算出した収着係数が正の値であることを確認した。また、トレーサーとして添加したNaClによってFe(III)型ベントナイト試料中のFe(III)イオンがNa+イオンとのイオン交換反応によって遊離すること、その遊離したFe(III)イオンが加水分解することでH+イオンが生成することが示された。観察された正の値の収着係数は、実験中に生成した鉄析出物にCl-イオンが収着したことに起因する可能性がある。このことは、膨潤・拡散前後のFe(III)型ベントナイト試料に対して実施したEPMA分析およびµ-PIXE分析において、Feの凝集領域が一部に認められたこととも整合する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は福島第一原子力発電所の事故に関連した緊急の用務などに多くの時間を費やしたため、やや遅れている状態であったが、今年度はその遅れを取り戻しつつあり、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度であることから、研究の取り纏めに力を尽くすとともに、研究成果の発表を積極的に行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
初年度に購入した実験用のセルなどを使用した実験を行ったことから、物品費を使用せずに実験を遂行できたこと、初年度の福島第一原子力発電所の事故に関連した緊急の用務などで研究がやや遅れ気味で今年度の事業を開始したことから、研究成果を控える結果となったことから未使用額が発生した。これは、今年度中に発表できなかった研究成果を発表する際の旅費などで使用する予定である。
|