高レベル放射性廃棄物の地層処分では、核種移行に対してバリア性能を有する緩衝材を用いることが考えられている。Na型ベントナイトは、陽イオンに対しては高い収着・遅延能を有することから緩衝材の有力な候補であるが、陰イオン性の放射性核種に対しては十分なバリア性能が期待できないとされる。しかし、炭素鋼製廃棄物容器の腐食に伴って緩衝材に放出されるFeイオンによりFe型化すると、陰イオンに対しても収着・遅延能を有する可能性がある。そこで、ここでは、ベントナイトの陰イオンに対する潜在的なバリア性能を明らかにすることを目的とした研究を実施した。 研究3年目で最終年度となる平成25年度は、平成24年度後半から開始した、Feイオンに代えてCa2+イオンを、また陰イオンとして炭酸イオンを用いたベントナイト中のイオンの移行実験をさらに進めた。まず、拡散実験よりそれぞれのイオンの拡散係数を求めるとともに、電位勾配下でそれぞれのイオンを移行させる試験からイオンの移動度を求めた。さらに、Ca2+イオンと炭酸イオンを電位勾配下で向流させる試験から、カルサイト析出に伴う炭酸イオンの移行遅延の可能性を調べた。その結果、電気浸透実験から求めた移動度と拡散実験から求めた見かけの拡散係数との比較から、炭酸イオンは電気浸透流の影響を受けやすいベントナイト粒子間の空隙を移行していること、一方、Ca2+イオンは電気浸透流の影響を受けにくいモンモリロナイト層間を移行している可能性が示唆された。また、Ca2+イオンと炭酸イオンを電位勾配下で向流させる試験では、ある特定の条件下でカルサイトの析出が起こり、それによって両イオンの移行が抑制されることが確認された。
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