研究課題
核医学、資源探査、素粒子物理、セキュリティ、物流計測など広汎な応用範囲を持つ放射線検出器は、一般にシンチレータと、蛍光を受ける受光素子 (光電子増倍管:PMT、Si半導体検出器:Si-PD) とから構成されており、最終製品の性能を決定する部位となっている。近年ではシンチレータとしてハロゲン化物を用いる研究が盛んであり、本研究の目標は発光量 100000 ph/MeV、エネルギー分解能 3% 以内 (662 keV) の新規シンチレータの創出である。本年度は主に Tl 添加 CsI をベースにした系の検討を行った。Tl 添加 CsI 自体の発見は半世紀前に遡り、本研究においても Bi3+ の共添加で大幅なシンチレーション特性の向上が発見されているなど、まだ改良の余地が大きなシンチレータである。また一般にハロゲン化物は潮解性が激しいが、CsI ベースの材料は、ほとんど潮解性がなく、実用上の観点からは好ましい。無添加 Cs2ZnCl4 結晶からは、数ナノ秒の高速なシンチレーションを計測することができた。発光量は 1000 ph/MeV 程度と、本研究で主眼とした値よりは小さいが、発光波長も近紫外域であるため、BaF2 代替としての利用が見込まれる。発光量の観点からは、CsCuCl3 結晶など、Cs と遷移金属ベースのものに Tl+ を添加したものが大きく、40000-50000 ph/MeV の値を示した。しかしながら結果として、初年度に発見した CsBa2I5 系には及ばなかった。
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放射線化学
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